密室パニック
夏合宿が始まる数日前、荷物整理をしようと
なまえは倉庫に閉じこもりっぱなしだった。
立て付けが悪いドアなので、彼女は開けっ放し
で作業をするものの、7月の暑さは容赦なくて、
これからさらに暑くなると考えるだけでゾッ
とする。
『んー!届かない!!!誰だここに置いた
のは、って多分クロなんだろうけど!!!』
そんな中、なまえが合宿の時にだけ使う備品を
取り出そうとしたら、彼女の手の届かない位置
にあり、まだ昨年の彼女がマネージャーに配属
されてはいなかった為、片付けた人間は高い棚にそれらを片付けており、そこには脚立も無く、
どうしようもない彼女は途方に暮れる。
『仕方ない、一旦戻って手伝ってもらうか。』
急いで彼女は仲間の練習する体育館へと走って
戻ると、犬岡や芝山は手が空いていない模様で、
困った顔をするなまえに気がついた夜久が
どうした?と彼女を気にして、すぐに彼女の
元へと駆け寄った。
『ごめん、合宿の備品を取りたいんだけど、
手が届かなくて、助っ人が1人欲しくて。』
リエーフ借りても大丈夫かなぁ?となまえが
申し訳無さそうな顔をして、夜久にそう問う
ので、彼はそんなことか!と言いながら
笑って、灰羽を呼び出した。
「リエーフ、お前なまえの手伝いしてこい。」
「はい!聞こえました。夜久さんだと届かない
からですか?」
夜久の指示に灰羽はサラッと失言混を混ぜて
了承すると、夜久はうるせぇ!と言いながら
灰羽の尻を蹴り上げる。
『リエーフ、そうじゃなくて極力3年生は
練習時間削らせたくないだけだからね?
…ていってもリエーフの貴重な時間も使わせ
たくなかったのに、ゴメンね。』
「こいつの特訓は残って自主練させるから
大丈夫だぞー。」
3人の会話が聞こえてきた黒尾も彼女に向けて
安心させるようにニヤリと笑い、灰羽はそれを
聞いてあからさまに嫌そうな顔を見せたが、
なまえにいい所も見せたかったのか、分かり
ましたと顔を歪ませながら、黒尾の言葉にも
頷く。
なまえは黒尾の自分を気遣う言葉に感謝をして、
『助かる。』と言うと、黒尾も「こっちの
セリフだろ。」と目を細める。
彼女はその言葉に微笑んで、灰羽の手を引いて
また物置の方向へと向かうのだった。
「なまえに変な事するやつよりは安心だしな?」
「やっくーん、あんましアイツも甘く見ない
方がいいと思うけど?」
「お前よりは幾分マシだろ!ほらなまえが
くれた時間なんだから、練習再開するぞ。」
倉庫と体育館までは僅かな距離だったのだが、なまえと灰羽の移動中に突然、まさかの土砂降り
の雨が降り、2人はその雨の勢いに慌てていた。
「雨足が強くなってますね、走りましょう。」
『嘘、傘なんてないよー!!!!』
2人は雨に打たれながら物置に向かって急ぎ足
で向かい、衣服は濡れてしまっていたが、
荷物を彼に下ろしてもらって、雨が止めば、
また後で取りに行こうと灰羽にとって欲しい
備品を指してお願いをした。
「これですか?」
『そうそう!ありがとうリエーフ。
助かっちゃった。』
なまえは灰羽にお礼を言うと、灰羽も気分を
良くしたのか、これからもなんでも言って
くださいと誇らしげに彼女に笑顔を見せる。
「よし、このままなまえさんに練習でも
いい所を見せますね!」
『ふふっ、頼もしいなー。』
用事も終わり、意気揚々と灰羽がドアノブに
手をかけると、ガチャガチャと回してもドアが
上手く開かないので、不思議そうに見つめて
いると、彼女はしまったと言いながら、その
ドアノブに視線を向けた。
『ここのドア、調子がおかしいみたいで、
開けにくいの忘れてたなー。』
1人で作業をする際には開けっ放しだったが、
先程の激しい雨で思わず反射で閉めてしまい、
彼女はしまったと頭を抱えれば、灰羽は俺が
開けますよ!と意気込んでガチャガチャと
またドアノブを回し始めた。
すると、バキッと確実にしてはいけない音が
して、外れてしまったドアノブを見て2人は顔
を見合わせ青ざめる。
『どうしよう、閉じ込められちゃったね。』
「なまえさん、俺のせいで…。」
それは、外からしか開けれない状態になって
しまい、普段は飄々としている彼が、半泣き
で謝り出すので、灰羽を大丈夫だよと励まし
ながら、これからどうしようかと彼女は頭を
悩ませるのだった。
『もうしばらく、時間かかるよね。』
彼女の予想通りの展開で、そこには誰も来な
かった。
今日に限って職員会議も長いと聞いており、
監督やコーチと自分達の不在を気にする人間が
残念ながら、向こうにはいない。
それに先程大雨に打たれ、そのせいで熱かった
体温は一気に奪われていたのか、なまえは少し
寒気を感じとっていた。
「なまえさん、寒いんですか?」
腕をさするなまえの仕草に灰羽は心配して、
思わず体が勝手に動き、彼女を包んで温めよう
としたが、自分の衣服も見事に濡れていたので、
かえってそれは逆効果に見えていた。
「直の方があったかいよな?」
『えっ、ちょっと…待って待って!』
おもむろに灰羽はなまえの前で濡れたシャツを
脱ぎ捨てて、あろうことか今度は彼女のシャツ
にも手を掛けようとするので、彼女もそれに
戸惑って制止させようとするも、力に適わず
脱がされそうになってしまう。
『やっ、ちょっとリエーフ!!!』
「俺もなまえさんもこの大事な時期に風邪を
引いたら大変でしょ!?」
体温温めなきゃ、冷える一方じゃないっすか!
と彼から珍しくまともな意見が返ってきて、
なまえもそれに驚けば、さりげなくバンザイ
させられ、シャツもキャミソールも脱がされ、
そのまま彼の腕に向き合うように包まれると、
灰羽の肌となまえの肌は完全に密着した。
『…本当だ、あったかい。』
「でしょ?」
なまえが驚くように灰羽の顔を見上げれば、
彼は満足そうに彼女に微笑んだ。
しばらく、互いの温もりを感じるまま、誰かが
来るのをただ待った。
彼女はただ身に纏うものが上が下着だけなのは
やはり恥ずかしいのか手を縮めたまま俯いて、
灰羽は気にしてない様子でというよりもかなり
ご機嫌気味に彼女を優しく包んでいた。
ただ、この状態で何も無い時間を保つのには
もちろん年頃の男女には無理がある。
「ヤバ…。なまえさん、何も考えない
ように頑張ってたんですけど。」
『ん…?どうしたの、リエーフ暑い?』
「そうですね、なまえさんのおっぱい
やっぱり大きいから当たってムラムラしてき
ちゃいました。」
相変わらずの彼のどストレートな回答になまえは
『えっ。』と顔を真っ赤にさせて、目を潤ませ
口をパクパクさせると、彼女に灰羽は構わずに その顔もエロいんですもんと彼女の羞恥心に
容赦なく、留めを刺してくる。
『リエーフ、もっ…もう大丈夫だからね!』
それに耐えきれず、なまえは灰羽の胸を勢い
良く押すと、勢い余って彼女はうっかり足を
灰羽が乱暴に脱ぎ捨てたシャツで足を滑らせて
しまった。
「なまえさん危ない!」
転びそうになるなまえを支えようとするが、
少し間に合わず、彼女の頭と背中は守れたが、
灰羽も一緒になって、倒れ込んでしまった。
『リエーフ、大丈夫?!怪我してない?』
「俺は大丈夫っす。なまえさんも怪我してなくてよかっ…」
すぐに灰羽のことを心配する声が聞こえ、灰羽
も怪我の無い彼女の様子に安心して顔を上げ
ようとすると、『んんっ。』と妙に甘い声が
聞こえて、自分が胸元にダイブしていた事に
気が付き、顔を動かした際に彼女がその刺激
に反応したようだった。
「ちょっと待って、なまえさんその声やばい。」
このシチュエーションはさすがに灰羽にも刺激
が強すぎたのか、彼女の顔をまともに見れずに
顔を伏せるが、その隠し場所は再び彼女の胸元。
『待って、リエーフ。そこはダメ!!!』
「遅いと思って来てみたら。」
「…お前なにやってるわけ?」
ギイィっとゆっくりと開けられたドアに鬼先輩
の顔がふたつ並んで、灰羽の顔はさあーっと
血の気が引いてゆく。
なまえの霰の無い姿に夜久も黒尾も沸騰して、
容赦なく灰羽をこってりと絞るのだが、
彼女のために動いてくれたこともあってか、
なまえが2人を宥め、彼はそこまで咎められる
ことも無く、そのまま無事合宿にも参加した。