つぶやきの部屋

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2025/04/28 22:00

オクタと正座
小エビは怒った。

きっかけは些細な言い合いだったが、カチンと来た監督生の「分かりました。じゃあもう二度と来ません」の言葉にオクタヴィネルの3人はぴしりと固まった。慌てて追いかけるフロイドの手を振り払った監督生に許して、とへらりへらり笑いながら謝るフロイドを筆頭にしたオクタヴィネルの3人に監督生がムッとした顔で言い放つ。

「正座してください。30分」

その言葉にオクタヴィネルの3人がきょとりと目を瞬かせてからクスクスと笑い出す。

「正座、ですか…?」
「正座って何?」
「初めて聞きましたね…」
「膝を折って、こうやって座るんです」
「へえ、なんだ簡単じゃん」
「そんな事で良いんですか?」
「ええ。『そんなこと』で良いですよ」

なんだそんなことか、と笑う3人にニッコリと笑顔で返した監督生が30分のタイマーをセットする。わいわいと楽しそうに話しながら正座をする3人だったが、わずか数分で表情が曇り、雲行きが怪しくなる。

「どうしたんですか。アズール先輩」
「……いえ、何でもありません」
「そうですか。まだ10分経ってませんからね。頑張ってください」
「はぁ!?あと20分以上あんの!?」
「そうですよ?30分って言ったじゃないですか」
「あの、監督生さん。一度足を崩しても…」
「ダメに決まってるじゃないですか。途中で辞めるなんて、言わないですよね?」

そわそわと足を気にし始めた3人にニッコリと微笑んでタイマーの残り時間を提示する監督生の表情の悪いこと悪いこと。正座を長時間することで足が痺れる、なんて監督生にとっては常識だし、アズール達のように正座をし慣れて無い人からすればものの数分で足が痺れて感覚が無くなることなんて初めから分かっていた。精々安易に引き受けたことを後悔すればいい。

楽しそうな監督生の表情に、してやられたのだと気付くがもう遅い。少し動くだけでびりびりと全身が痺れるような感覚に襲われて、動こうにも動けない。だが、動かなければじりじり、じわじわ、と足の痺れは増していく。どうにも出来ずにぐっと拳を握りしめて耐えるしかない状況にアズール達は本気で後悔した。

それから軽快な音でアラームが鳴り、監督生が「はい、終わりですよ」と声をかけてくれるが、動けない。それもそのはず、30分も正座をすれば足が痺れて動けなくなるに決まっている。そして、無理やり動かそうものなら爪先から頭のてっぺんにかけて痺れる感覚に襲われるから動こうにも動けない。ただ痺れが引いていくのを耐えるしかないのだ。

「何これウッゼェ!?足ちょーびりびりすんだけどォ!?」
「こ、れは…あっ、ちょっとフロイド隣で動かないでくれます!?」
「監督生さん、貴方これ分かっててやらせましたね!?」
「あっははは!当たり前じゃないですか!でも陸1年生の皆さんには良い経験になったのでは?」

ひいひいとお腹を抱えて笑う監督生に苛立つオクタヴィネルの3人だが、当然足の痺れで立てるはずもない。むしろ動こうとすればするほどジリジリと痺れて声を出さないように、耐えるので精一杯だった。そんな3人に心底楽しそうに笑った監督生がぱしゃりと1枚写真を撮って部屋の出口へと足を向ける。

「早く治る方法は痺れてても頑張って動かして血行を良くすることですよ。頑張ってくださいね」

そう言ってふっ、と鼻で笑った監督生の表情が、今まで見たことが無いくらいイキイキしていたと後にオクタヴィネルの3人は語る。




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