つぶやきの部屋

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2025/06/17 21:50

元帝光🌸ちゃんの話10
元帝光バスケ部の🌸ちゃん。

合宿も無事に終了し、やってきたのは体育館。今日この場所で行われるのは海常vs桐皇の試合。見るつもりはなかったのだが、流れでここまで来てしまった。とは言え、黄瀬からうるさいくらいに試合を見に来てくれと言われていた🌸としては丁度良かったのかもしれない。

自分が楽しいだけ、自分たちが気持ちいいだけ。そんなプレースタイルだった黄瀬が、チームのために、自分のために、必死になって戦っている姿を見て、🌸の目から涙が零れた。どうして泣いているのか、どうしてこんなにも胸が痛いのか、🌸自身も分からない。

「えっ、🌸ちゃんなんで泣いて…!?」って伊月が驚いて声を上げるから、全員の目が🌸に向いてどうしたんだと皆が狼狽えるから「ちょっと、席外します」って目元を隠すように俯いた🌸が立ち上がる。着いていこうとする誠凛の面々を相田が「放っておいてほしい時だってあるのよ。馬鹿ね」って止めるから、皆渋々腰を下ろす。

外の風にあたって、そろそろ戻ろうかと体育館へ足を向けた🌸だったけどばったり黄瀬と会ってしまう。「泣いた、んスか?っ、もしかして誰かに泣かされたんスか!?」って目を見開いて駆け寄ってくる黄瀬に「誰のせいでもないわよ。ていうか、早く戻りなさいよ」って嫌そうに眉間に皺を寄せるから、黄瀬の目が寂しそうに揺れる。

「俺、勝つっスよ」って言ってくる黄瀬に「そう。がんばって」って返して、黄瀬の方をちらりとも見ずに背中を向ける。誠凛の皆と一緒に試合を見る気にはなれなくて、立ったままぼんやりと試合を見つめる。点が入って、攻守が変わって。自分たちのチームを勝たせるために、皆が必死にボールを追いかける。

バスケットボールとは、本来こういうものだったなと思いながら試合の行く末を見届ける。試合は、青峰率いる桐皇の勝利。初めて見る黄瀬と青峰の姿に「あんなに、必死にボール、追いかけられるんだ」って寂しそうに呟いて、ポケットからスマホを取り出す。

『先に帰る』とだけ黒子にメッセージを送って体育館を後にした🌸のことなんて知りもしない黄瀬は帰り際、あわよくば🌸に会えたりしないものかと探すけれど見つかるはずもない。『負けちゃったっス』と🌸に送ったメッセージは、翌日になっても既読にならず電話も繋がらない。

自室で一人、黄瀬からのメッセージを見た🌸だったけど、そのメッセージを開くことなくスマホの電源を落として「やっぱり、持たざる者は何もできないし、何も変えられないんだよ」って呟いて、一人静かに涙を流した。




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