つぶやきの部屋

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2025/06/17 23:10

元帝光🌸ちゃんの話11
元帝光バスケ部の🌸ちゃん。

インターハイ終了後から、🌸に避けられまくっている黒子が「黄瀬くん、何か知ってますか?」って連絡をしたら「俺の方が聞きたいっスよ!あの日からずっと連絡取れなくて、毎晩枕濡らしてるんスよ!?」って泣きそうな…というよりもう泣いている声が返ってくるから完全にお手上げ。

「同じ学校の黒子っちですら避けられてるなら、他校の俺じゃ出る幕無しじゃないっスか」ってぶすくれたような声で言う黄瀬からは、それ以上何も得られずに電話を切る。火神や日向、相田、伊月などの比較的🌸と交流があった人多ですら避けられている始末だった。

そんなある日、学校の帰り道にたまたま🌸をみかけて黒子が声をかければ「うわっ、びっくりした…この感じ、久しぶりだわ…」って🌸が自嘲めいた笑みを浮かべる。「どうして、僕たちのことを避けるんですか?」ってド直球にきかれて「答えるわけ、なくない?」って呆れたように🌸が肩を竦める。

「理由なんて、黒子が一番よく分かってるんじゃないの」って冷たい視線を向けてくる🌸に「ッ、あの日のことは…誤解なんです。話を聞いてください!」って黒子が珍しく声を荒げる。またしても偶然その現場に居合わせてしまった火神も黒子の様子に驚いたように目を見開いた。

「誤解でもなんでもないわ。私には何もできない、何も持ってない。だから私はバスケ部を辞めたの。もう、二度とあんな思いはしたくないの。お願いだから、ほっといてよ…!なんで、なんで平気な顔して私に声がかけられるの…!?黒子も、涼太も、緑間も!」って泣きながら声を荒げる🌸の姿に黒子も、火神も目を見開いて息をのむ。

🌸が声を荒げる瞬間なんて、一度だって見たことがなかったから。ましてや涙を流す姿なんて、見たこともなければ見たくもなかった。衝撃で言葉を失い立ち尽くす黒子に「悪いけど、あの日からアンタたちのこと、大嫌いだから」って泣きながら微笑んで背を向けた🌸を黒子は追いかけることができなかった。

それからしばらくそこに立ち尽くして、帰ろうとして振り返って初めて火神がいることに気が付く。「火神くん、いつから…」って驚く黒子に「割と、最初から」って気まずそうに火神が呟くから「…そう、ですか。変なところを、見せちゃいましたね」って黒子が泣きそうな顔で言う。

「アイツらって、黄瀬とか、他のキセキの世代のことだろ」って言う火神に「…はい」って小さな声で黒子が頷く。「何があったか、聞いていいのかよ」って恐る恐る聞いてくる火神に「少しだけ、僕に付き合ってくれますか」って黒子が返して、バスケのコートがある公園に向かう。

「🌸さんは、帝光中バスケ部のマネージャーでした」ってぽつり、ぽつりと黒子が話し始める。🌸がバスケ部に入ったのは、何てことはない理由だった。友人に誘われたから。たったそれだけの理由で始めたバスケ部のマネージャーだったが、🌸がバスケの楽しさに気付くのは早かった。

マネージャーとしての仕事を覚え、バスケのルールを覚え、献身的に選手たちをサポートする姿はすぐに評価された。一軍のマネージャーとして仕事をするようになり、必然的にキセキの世代との交流も増えた。裏表のない、無邪気な笑顔と明るく元気な性格の🌸が部に馴染むのはあっという間だった。

黒子が一軍に昇格し、続いて黄瀬が入部して一軍へ昇格。驚くべきスピードで成長し、どんどん先を進み始めた彼らは特別な能力を持たない🌸を置いていった。類まれなる才能を持ったキセキの世代と、そんな彼らを同じように才能を開花させた桃井がサポートする。それで、事足りてしまった。

「正直さあ、🌸ちんって試合来てる意味ある?」「あー、まあそうだよな。ベンチにはさつきがいるし」「応援席は二軍三軍の選手でびっしりっスもんねえ」「練習ならまだしも、試合ともなれば仕方ないのだよ」「🌸にも桃井のような得手があればまた変わってくるだろうがな」

そんな言葉を聞いてしまった🌸は、あまりのショックに涙すら出なかった。彼らは、決して🌸を邪険にしたかったわけではない。ましてや使えない、邪魔だ、いならいなどと言うつもりも到底なかった。試合の日になると誰よりも早く会場に駆けつけ、準備をして、応援をする。

細かい雑務や二軍や三軍の応援するメンバーへの対応など、🌸の行っていた業務が想像よりもずっとハードで大変なことを彼らは知っていた。大事なチームメイトである🌸だからこそ、そこまで頑張らなくてもいいんじゃないか、という話の流れから発された言葉だったが、タイミングが悪すぎた。

チームに利益をもたらす人間でないと、必要無いと切り捨てられる。🌸は、灰崎の一件でそれを知っていた。だからこそ、大好きな彼らから、面と向かって不要だと言われる前に自らバスケ部を辞めた。これ以上、傷つきたくなかったから。これ以上、大好きだった友人たちを嫌いになりたくなかったから。

「僕たちが、🌸さんを傷つけたんです。彼女がバスケを辞めたのは、僕たちのせいなんです」って唇を嚙み締めた黒子に、火神が「なんでアイツがバスケ部辞めるって言った時に引き留めて話しなかったんだよ」って呆れた顔をすれば「本当に、その通りです。どうしてあの時引き留めなかったのか、ずっと後悔してます」って黒子が困ったように笑う。

退部届を提出した🌸は「これ以上、彼らと一緒には頑張れないです」と告げた。その言葉を、文字通りそのまま受け取った彼らはがっかりした。🌸も他校の奴らと変わらない、圧倒的強さや才能の前に抗うことなく諦めてしまうような人間なのだと。だからこそ、引き留めなかった。

それが過ちだったと、誤解だったと気付いたのは、それからしばらく経ってからのことだった。🌸がバスケ部を辞めたことを聞きつけた灰崎が「よお、バスケ部辞めたんだって?」と声をかけ、事の次第を聞いた灰崎は腹を抱えて笑った。自分を追い出しただけでは飽き足らず、献身的に支えてくれていたマネージャーまで同じ理由で追い出すのか、と。

あまりの滑稽さに、灰崎は皮肉を込め、喜々としてバスケ部へとその話をした。そこで初めて、彼らは🌸がバスケ部を辞めた本当の理由を知ることになる。もう手遅れだった。話をしようにも避けられ、🌸の近しい友人からは冷たい目を向けられ取り次いですらもらえない。

誰一人、🌸に謝ることも、誤解を解くこともできずに、中学校生活は幕を下ろした。高校に進学して、奇跡的に出会えて、会話を許されたことに甘えて、謝罪をうやむやにした。「出会った時に、誤解だったんだと謝るべきでした。🌸さんの優しさに、僕たちは甘えていただけです」って拳を握りしめた黒子を見て火神はガリガリと頭を掻いた。

「つまりは、誤解だって謝りてーんだろ」「…はい」「だったらウインターカップでキセキの奴らを全員ぶっ倒して、アイツらの首根っこひっ捕まえてアイツんとこ連れてきゃいいだろ。んで、全員で謝れ」「本気ですか」「ここまでこじれさせといてなりふり構ってる余裕あんのかよ」って眉間に皺を寄せた火神に黒子が小さく吹き出す。

「そう、ですね。でも、僕一人でキセキの世代の皆の首根っこをひっ捕まえるのは難しいので、手伝ってもらえますか」って笑う黒子に「おー、任せとけよ。黄瀬はまだしも緑間や青峰が謝る姿が拝めるなら喜んで手伝ってやる」って火神が笑って返す。

その日の夜、🌸の元に『僕は、誠凛高校の皆とウインターカップで優勝します。優勝したら、🌸さんに話したいことがあるので時間をください。』ってメッセージが届く。「話すことなんて、ないよ」って呟いた🌸が目を閉じる。面と向かって役立たずだと、言われることが怖かった。

嫌われたくなくて逃げ出した。だからこそ、今までと変わらない様子で声をかけてくれる皆に甘えていた。優しい皆に甘えていたけれど、それが続けば続くほど苦しくなった。心の中では自分のことを役立たずだと思っている、伝えないでいてくれているだけだ、と。

「もう、ほっといてよ。嫌いなら嫌いって言ってよ、なんで、やさしくするの」って震える声で呟いた🌸が枕に顔を埋める。あの日から、ずっと涙が止まらない。あの日から、🌸の心はずっと迷子のままだった。




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