つぶやきの部屋

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2025/07/01 18:50

元帝光🌸ちゃんの話21
元帝光バスケ部の🌸ちゃん。

ウインターカップ優勝に向けて、各自が努力を続ける。桐皇戦で思い知った自分の力の無さ。もうあんな思いはしたくないと、自分に出来ることはないかと思考を巡らせる。が、考えれば考えるほどに何も浮かばず、焦りと苛立ちだけが増していく。

「なんで、なんでこんなに、何もできないの…!」って悔しさで涙を流しても、何かができるようになるわけじゃない。試合をするたびに、どんどん成長していくみんなの姿を嬉しいと思う反面、羨ましいと思う自分もいた。とにかく、皆の役に立ちたくて、皆の為に何かがしたくて。

せめてもの気持ちで自分が持っている紫原のプレースタイルや癖、性格を伝えて陽泉戦へと臨む。桃井なら、もっと勝利に繋がるような情報を提供できるのだろうが、🌸にはそんな力は無い。分かっていたのに、中々点数の決まらない試合を見て、自分の無力さを突き付けられた。

それでも、今ここで、自分が諦めてはいけない。試合に出ている皆が諦めていないのに、ベンチの自分が真っ先に諦めるなんてあってはいけない。「🌸さん、ありがとうございます」「ううん、私にできることは、ちょっとでも皆が楽になるようにサポートすることだけだもん」って笑う🌸に誰一人違和感を覚えなかった。

気丈に振舞えば振舞うほど、苦しくなっていく。自分の気持ちに蓋をするようで、息が苦しくなる。特別なことができなくても良い、🌸に応援していてほしいのだと、誠凛の皆はそう言ってくれた。その言葉を信じている。信じているはずなのに、自分の無力さを実感するたびに、頭をよぎる過去の出来事。

いつまでも過去のことに囚われていてはいけないと、分かっているのに、思い出すと呼吸が浅くなって、視界がぼやけるような感覚に襲われる。あの人同じことを、繰り返すのは嫌だ。優しい彼らにすら見放されたら、きっともう、一生立ち上がれなくなる。

そう思うだけで、怖くて泣きたくなった。試合には勝った。勝ったはずなのに、どうしてこんなにも胸が痛いのか。どうしてこんなにも怖いのか。どうして、どうしてこんなにも、泣きたくなるのか。🌸自身ですら分からない、不安と恐怖が、🌸の心にぽっかりと穴を空けた。

負けるのは嫌、だから頑張る。それがどれほど難しいことなのか、紫原は分かっているのだろうか。負けるのは嫌、だから頑張る。それが出来たらバスケ部なんてやめてない。負けるのは嫌、だから逃げた。それが自分だ。才能も無ければ、何か一つでも秀でたものがあるわけでも無い。

やっぱり、マネージャーなんて、やらなければよかった。才能があって、できることがあって。だから紫原はバスケを続けてる。嫌いでも才能があれば続けられる。才能があれば、できることがあれば、今は嫌でもいつか楽しくなるから。でも、どれだけ好きでも才能がなければ続けられない。

才能がなければ、できることがなければ、いつか間違いなく楽しくなくなる。中学時代の紫原が言っていた通りだった。才能もなければ、できることも無い。いつか、私は本気でバスケを嫌いになって、皆は何もできない私を嫌いになるかもしれない。私が、この場所に居続ける理由はあるだろうか。

試合が終わってから、ずっとそんなことを考えていた。皆は絶対そんなことを思わないし、言わない。そう信じている。信じているはずなのに、あの日の彼らの言葉が忘れられない。絶対なんて、無いのだ。あの日の自分の選択が間違いではなかった気さえしてくる。

外の風にあたって、ぼんやりと空を見上げていれば今の🌸にとって最警戒人物であるアレックスの声が聞こえて背筋が伸びる。そおっと覗き込めばストバスの時に出会った火神の兄である氷室の姿も目に入り、何を話しているのかと気になってしまったのが運の尽き。

バスケを辞めたはずの灰崎が現れて、氷室に手をあげたものだからあわてて飛び出してしまう。「ちょっと、灰崎…!」って声を上げた🌸を見て灰崎は目を丸くしてからにんまり笑う。「よお、🌸。お前バスケ辞めたんじゃなかったのかよ」って氷室に背を向けて🌸の方に向けて歩いてきた灰崎が🌸の肩に腕を回す。

「…こっちのセリフなんだけど」「俺はただの暇つぶしだよ」「あ、っそ」「俺よりお前だろ。なんでまたバスケ部入ったわけ?もうアイツらのことなんて忘れました〜ってか?ははっ、随分冷てぇ女だな」って笑う灰崎に「そんなのじゃ、ないよ」って🌸が泣きそうな顔をするから、見かねた氷室とアレックスが声をあげる。

邪魔されたことに腹を立てたのか、🌸の肩から腕を離した灰崎が再び氷室とアレックスに攻撃をし始めるから、🌸が「ちょっと、やめなってば…!」って止めに入るけど、振り払われて尻もちをつく。誰か呼んでこないと、って立ち上がろうとしたところに火神がやって来て、続いて黄瀬もやってくる。

尻もちをついてる🌸を見るなり慌てて駆け寄ってきた黄瀬が「🌸っち、大丈夫?立てる?」って🌸の手を引いて立たせて、灰崎に向き直り話を始める。「ああ、そうだ。俺が欲しいのはキセキの世代の呼び名だけじゃねえからな、リョータ」って去り際に言い出した灰崎に「…どういう意味っスか」って黄瀬が怪訝な顔をする。

楽しそうに笑いながらゆらゆら歩いてきた灰崎が先ほどと同じように🌸の肩に手を回して「役立たずだって追い出されたくせに、性懲りもなくまた見捨てられるためにバスケ部のマネージャーやってんだもんなぁ。また見捨てられて泣く前にさっさと辞めちまえよ。なあ、🌸?追い出されたモン同士、仲良くしようぜ」って耳元で囁く。

途端にさっと顔色を変えた🌸を見て「イイ顔すんじゃねえか、🌸。いつでも連絡して来いよ、待ってるぜ」って笑った灰崎がひらひら手を振っていなくなる。呆然とした様子でぺたりと座り込んだ🌸の心は、もう限界だった。




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