いつもより早いペースで酒を飲んでいた梓は当然の如く酔っていた。それもいつも以上に。このままぶっ倒れられてもまずいと思い、半ば強引に店から引きずり出す。

「おい、梓?」
「んん…」
「まじ、かよ…」

家まで送っていこうと梓を見ると俺の腕にしがみついたまま寝ていた。数秒固まった後、俺はもう片方の空いた手で目を覆った。嘘だろ、生殺しじゃねぇか。

「おい、梓」
「や、だぁ…」
「っ、!」

肩を叩いて起こそうと試みたが、眉間にシワを寄せて更にしがみついてくる。頼む、ほんとに起きてくれ。

「どうしろってんだ…」

その後も全く起きる気配のない梓を見ながらそう呟いた俺の頭に、ここに来る前に堤に言われた『そんなんだと梓さん、誰かにもってかれますよ』なんて言葉が浮かんだ。あの時は、適当にあしらったが確かに梓はモテる。あながち、堤の言ってることも間違いではない、はずだ。

「…どうなっても知らねぇからな」

梓に、そして自分に言い聞かせる様にそう呟いて諏訪はタクシーを止め、自分の家に向かわせた。家に着き、梓を横抱きにしてベッドに運ぶ。腕の中で丸くなる梓を見ないようにベッドに寝かせて布団をかける。

「ん、ぅ…すわ…」

図ったようなタイミングで眠りながら自分の名前を呼ぶ梓に自分の顔がブワリと赤くなったのがわかった。惚れた弱み、というのはでかいもので。何故こうも可愛く見えるのかと俺は頭を抱えたくなった。

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