「おっ、限定ガチャきた。渚ー引いてー」
「…また?いいの来なくても文句言わないでね?」
「だいじょーぶだいじょーぶ」
至に手招きされて毎回恒例のセリフ。至の足の間に収まってガチャの画面をタップする。私のお仕事はこれだけ。
画面がぱあっと明るくなって虹色に輝く。その瞬間至の腕が私を抱きすくめる。これもいつもの事。いいやつが当たったって事なんだろうけどよく分からない。
「さっすが俺のガチャ代打要員…」
「はいはい、どうせ私は彼女じゃなくてガチャ代打要員ですよーだ」
ぎゅうっと抱きしめられるけど何だか釈然としなくて不貞腐れる。面倒臭い女だとは自分でも思うけど、彼氏が自分よりゲームで寂しくならないわけがない。
今日だってせっかくお互い休みの日だからって会いに来たのに至ってばずっとゲーム、ゲーム、ゲーム。私のこと、全然構ってくれない。
「ごめんって。嘘嘘、お前は俺の可愛い彼女だよ」
「…ずるい」
「ん?何が?」
「そうやって言われたら許しちゃうじゃん」
「…はぁ。可愛いなー、お前は」
「はっ!?」
「俺がゲームやってる理由の一つはお前だよ」
「…意味わかんないんだけど」
「ゲームやってたら構ってほしいってお前が拗ねてくれるからな」
「…性格悪い」
「知ってる。ほら、構ってあげるから何して欲しいか言ってみ?」
「…ぎゅってして」
「ん、」
「…ちゅーして」
「はいはい」
「…すき」
「俺も好きだよ」
「だいすき」
「ふっ…」
「なんで笑ってんの」
「俺は愛してるよ」
「うっ…」
「なんで顔隠すんだよ」
「きゅんとした」
「ははっ、俺も今きゅんとした」
2017/08/01 執筆