「へぇ〜君が摂津の彼女チャン?」
「めっちゃ可愛いじゃん!」
「摂津なんてやめて俺にしない?」
「いやいやコイツより俺でしょ〜」
「ぎゃはははは!」
万里と久しぶりに遊びに行こうって、待ち合わせしてたのに。目の前で下品に笑う人達はどう見たって万里の友達には見えない。どうせ昔万里に負かされた人達なんだろうけど。
意図して知らないフリ。無視。こんなの相手にしてる時間がもったいない。あーあ、万里早くこないかな。なんて思ってると思いきり掴まれる腕。万里はこんな乱暴なことしない。と、なると犯人は言わずもがな。
「…なんですか」
「ねえ、聞いてる?」
「いえ全く」
「彼氏が彼氏なら彼女もムカつくな」
「ちょっと来いよ。俺らとイイコト、しようぜ」
「お断りします。あんた達みたいな奴に私はもったいないから」
「てめえ…!言わせておけば!」
万里をバカにされたこと。私が万里に仕返しするための切り札になると思われてること。とにかくムカついて勢いに任せて口を開く。逆上した男がグーに握った手を振り上げる。やばい。反射的に目を瞑って顔を逸らす。
「はい、そこまで〜」
「万里!」
「お前何してんだよ」
「喧嘩売られてた」
「喧嘩売ってた、の間違いだろバカ」
「うっ…」
ふわりと首元に何かが回って背中にも何かが触れる。聞き覚えのありすぎる声と男達の驚く声に目を開けると顔の少し前で男の手は誰かの手に止められてて。男達の目線を辿ると、そこいたのは不機嫌そうな顔をした万里。
「俺の可愛い彼女チャンに何の用?」
「な、なんでもねえよ!」
「ったく、逃げんだったら初めからくんなっつーの」
「一昨日来やがればーか」
「んで?渚ちゃんは何でそう無謀なことをしたがるんだ?ん?」
「うっ…ごめん…」
「怪我ねえ?」
「ん…」
「ったく、なんで挑発したんだよ」
「見てたの?」
「丁度お前が喧嘩売り出したくらいからな」
「む…だって、万里のことバカにしたから…」
「…は?」
「彼氏が彼氏なら彼女も彼女だなって、あいつらがいうから」
「…それどっちかっていうと渚がバカにされてんじゃねえの?」
「私には万里をバカにしてるように聞こえたの」
「…ほんっと、俺のお姫様は無茶するよなあ」
「私の王子様がやんちゃすぎるせいだと思う」
「はいはい、サーセン」
「…ありがと、助けてくれて」
「王子様のオシゴトはお姫様を守ることだからな」
「じゃあお姫様のお仕事は王子様にいっぱい甘やかしてもらうことかな」
「仰せのままに、お姫様」
2017/08/04 執筆