「十座くん甘いもの好きなの?あ、十座くんって呼んでいい?」
いつも通るケーキ屋の看板に書いてあった【新作】の文字に思わず足を止めた。買おうか否かと迷っている俺の後ろから声をかけてきたのはたぶん、同じクラスの奴。
「あ、その顔は私のこと知らないな!」
「…悪ぃ」
「あはは!謝んなくていいよ!そりゃそうだよね!」
俺の言葉にケラケラ笑う女は渚と言うらしい。なんで俺に声をかけてきたんだ、と無意識に眉間にシワがよる。
「なんで俺に声かけてきたんだろう、こいつって思ってるでしょ」
「!?」
「あはは!大正解?十座くん結構顔に出やすいんだね」
「…そうか」
「ずっと話してみたいなあって思ってたんだ」
「俺と?」
「うん。この間、野良猫に絡まれてたでしょ?」
「あぁ」
「動物に好かれる人に悪い人はいない、ってね!」
「…ふっ、変な奴」
「あ!笑った!初めて笑ったとこ見たけど十座くん笑ってる方がかっこいいよ!」
そう言って笑った渚に返事を返せなかったのは別に照れた、とかそういう訳では無い。
2017/08/09 執筆