「真緒」
「っ、!な、なに…」
「なんでそんなに怯えてんだよ」
「べ、別にそんなこと…」
談話室で万里の隣に座り、万里のゲームを覗き込む真緒に後ろから至が声をかける。その声にピクリと肩を揺らして恐る恐る後ろを振り返る真緒の目はゆらゆらと揺れていて。思わず万里がツッコミを入れる。
「買い物、付き合ってくれない?」
「えっ、至さんが買い物…?てか外出るんすか…?」
「外出なきゃ買い物行けないでしょ」
「いやそうじゃなくて」
「な、なんで私…」
「ちょっとね。ほら、準備してきな」
「えっ…でも…」
「…真緒、準備してこい」
「えっ?」
「俺も行くから」
「!わ、わかった!」
至とオドオド会話をする真緒を見かねて万里が声を上げる。万里の言葉にぱあっと顔を輝かせて自室に向かった真緒を見送って至は小さくため息をついた。
「至さん、何したんすか。アイツに」
「なーんにも。まああるとすれば多分あの時だろうな」
「至さんが追っかけてった時すか」
「そ。自分の一番弱いところを見せちゃったから気まずい、みたいなやつだと思うんだよね」
「なる。そういうことか」
「だからお前は来なくていいからね」
「初めから行く気なんかないっすよ。この俺が助けてあげたんだから感謝してほしいくらいっすよ」
「さすが万里。さんきゅー」
2人でソファに座り、お互い携帯ゲームをしながら会話をする。少しするとパタパタと真緒がやって来る。幸と一成に買ってもらった、と言っていた淡いピンクのワンピースに白いレースのカーディガンを着た真緒はいつもよりずっと年相応に見えた。
「お、似合ってんじゃん」
「ほ、ほんと?」
「おー、ほんとほんと。可愛いぜ」
「うっ…ありがと…」
「じゃ、まあ気ィつけて行ってこいよ」
「えっ!?万里行かないの…?」
「俺は限定クエあるからパス。いってら」
「真緒、行くよ」
「あ、う…行ってきます…」
万里が頭を撫でて、褒めてやると少し照れながらもふんわり笑う真緒。そんな真緒に万里が自分は行かないことを告げると驚きに目を見開いた後、目に見えて狼狽える。至の言葉に心底寂しい顔をしてチラチラ万里を見ながら至の後ろを歩く真緒の姿に万里の心がチクリと痛んだ。
「ま、至さんだし。大丈夫だろ。許せ、真緒」
2017/09/17 執筆