探索から戻ってきた海常の報告は予想通りと言うかなんというか。「何も無かった」と海常の主将の言葉にある仮定が確信に変わった。

「やっぱり葉月か」
「みたいだね。ま、別にいいけどさ。予想はしてたし?あ、でも霧崎から何人かは連れてくよ。私一人とかメンタルが死ぬ」
「それに関しては心配しないで下さい。こちらできちんと配慮します」
「あ、うん。ありがとう?」
「なんで疑問形やねん」
「いや、まさか聞かれてるとは思わなかったんで」
「そないに大事なこと聞いとらんわけないやろ」

私の言葉を聞いて眉間にしわを寄せるまこちゃんはやっぱり優しい人だと思う。ラフプレーとか人の不幸は蜜の味とか結構やばい奴だけど自分のテリトリーに入れた人にはとことん甘いからね、この男。と思ってたら赤司から声をかけられて思わず肩が跳ねた。そんな私を見て今吉さんがケラケラ笑う。

完全にまこちゃんと二人で話してる気分になっていたけど実際は赤司も今吉さんも私が探索に行かなければ進展しない、という可能性は考えていて海常の報告を聞いて確信に変わったらしい。やっぱり分かっていた人は分かっていたみたいだ。さっぱり何のことか分かってないバカもいるけど。

「ま、これでやっと進展する訳やし葉月ちゃんには頑張ってもらわんとな」
「……そうですね」
「皆の為に頑張るわけじゃないって言いたそうな顔やな」
「分かってるなら言わないでもらえます?」

何が面白いのか知らないけどニコニコしながら私に絡む今吉さんにうんざりしながらも返事を返す。出来ることならシカトしたい。けどそんな事したら後が怖い。なんで私の周りにはこういう人しかいないんだろうか。まこちゃんに至っては今吉さんが私の横に来た瞬間逃げた。めちゃめちゃ早かった。

「探索は先程と同じメンバーでお願いします。ただし、西条さんと朝倉さんは交代してください」
「ついでに言うと葉月ちゃんはこれから全部の探索に参加やからみんな仲良くな〜」
「仲良くしなくていいです。てか、黙っててください」
「ほんま厳しいな、葉月ちゃん」
「葉月ちゃんって呼ばないでください」

赤司がみんなに指示を出して、その指示に全員が頷く。今吉さんも口を開いたから何を言うのかと思ったらやっぱりろくでもないことだった。まこちゃんが前に「あの人に人が嫌がることをさせたら右に出るものはいない」とか何とか言ってたけどほんとにその通りだと思う。ウザイだとか面倒だとか思った瞬間、こっちを見るからやっぱりあの人は妖怪なのかもしれない。

「葉月、行くぞ」
「あ、うん」
「何ボーッとしてんの?」
「今吉さん怖いなって」
「あぁ…あの人か」
「それより、あの子と探索行ってみてどうだった?」
「んー?愉しかったよ?」
「何も出なかったからな。割とつまらなかった」
「どっちだよ」
「やっぱあの子やばいなーって思った」
「確かにやばかったな」
「やばいって?」
「すーっごいバカ女」
「ぶはっ!ちょ、やめてよ…っ!あははっ!」
「何も無いとこで躓いて、何も起きてない所で声を上げて、終いには何で自分が探索に送り出されたのかも分かってなかったからな」
「あははっ、それバカってか鈍臭いだけじゃん」

体育館のステージ前でぼうっと座り込んでいた私に声をかけてきた一哉と康次郎にさっきの探索のことを聞いてみた。まさかそこまでとは思っていなかったこともあって笑いが止まらない。誠凛と一緒にきゃいきゃいしてるあの子はまさか自分が盛大にバカにされてるなんて思ってもいないんだろうなって思ったらもっと面白くなった。

「あー…霧崎第一の朝倉です」
「朝倉さん!ぜひ君と話をしたいと思っていたんだ!俺の名前は森山由孝。ぜひ由孝先輩と呼んでくれ!」
「あ、はい。よろしくお願いしますね、由孝先輩」
「くっ…!可愛い…!」
「ふふ、そんなに褒めても何も出ませんよ」
「なんで葉月猫かぶってんの?」
「いや、反射的に…」
「葉月に告白してくる奴らと同じようなこと言ってたからな」

体育館の扉の前で待つ海常の人に軽く頭を下げる。その瞬間、両手を取られて目の前に人が立っていた。うん、これも割とホラーだった。びっくりした。康次郎が言ったように、私に告白してくる人達と同じようなセリフを言うものだから思わず、というかほぼ反射的でいつもみたいに対応したけどよく考えたら此処で猫かぶってもしょうがないわ。あれ、この人私がこういう性格じゃないって分かってるよね?え、分かってるのにこのリアクションなの…?

「うるっせえんだよ森山ァ!」と蹴りを入れられてる森山さんに冷めた目を向けていると、ふと視線を感じた。視線の方を向くと、そこにいたのは黄瀬で私の顔をじっと見てくるもんだから私も見返してたら「お前も他校のマネージャーに喧嘩売ってんじゃねえ!」と思い切り蹴られてて笑った。

.


ALICE+