目が覚めたら体育館だった。

「…いやいやいや何でだよ」
「何一人で喋ってんの?」
「いや、何でもない」

自分の頭がおかしくなったのかと思わずツッコミを入れると、隣に座ってた一哉にツッコミを入れられた。いつも通り家に帰って、ご飯を食べて、お風呂に入って、ベッドに入って寝たはずなんだけど。何故かザキに起こされて目が覚めた。体を起こすと見事に勢揃いしてるキセキの世代とその他諸々に現状に対する疑問よりも先に最悪だ、とため息をついた。なんだこのカオス空間。

「誠凛ってマネージャーいたっけ?」
「知らなーい」
「何か用具室で倒れてたらしいぜ。青峰が見つけてきたんだと」
「…へえ」
「葉月、ちょう悪い顔してるじゃん」

目に止まったのは誠凛の制服を着た女の子。見たことないなあ、と思い隣の一哉とザキに聞いてみると、ザキが教えてくれた。じっとその子を見つめていると、一哉に頬をつつかれる。悪い顔とか失礼すぎる。まあ確かにあの子に対して不信感とかはあるけど、そんなに悪い顔してないと思う。

「…これさあ、クソ面倒な事に巻き込まれたんじゃないの」
「多分ね」
「えー…絶対面倒くさいじゃん。帰りたいんだけど…」
「どこでもドアみたいに、あのドアを開けたら帰れる「わけないでしょ」」
「どこでもドアって…っ」
「真顔でどこでもドアとか古橋ウケるんだけど」

赤司と今吉さんと一緒に話をするまこちゃんを眺めながら口を開くと健ちゃんが私の膝の上に頭を乗せながら返事をする。重い。ため息をつく私に至極真面目な顔でボケる康次郎にザキと一哉が腹を抱えて笑う。

「ちょっと、健ちゃん寝ないでよ」
「んー起きてる起きてる」
「寝たらまこちゃんに怒られるよ」
「それは困る」
「じゃあ起きて」
「起きてるって大丈夫」
「重いんだってば」
「大丈夫大丈夫」
「何が大丈夫なのか分かんない」

膝に頭を乗せて目を瞑る健ちゃんと会話を交わす。本人が大丈夫って言ってるから寝はしないんだろうけど如何せん重い。人の頭って中々重いんだよ、知ってる?

「ホラーゲームみたいだよねー」
「確かに、俺も思った」
「ビビりなのにホラゲするの?」
「ビビり関係ねえだろ。つーかビビりじゃねえし!」
「いやいやザキはビビり担当でしょ」
「葉月だってお化け屋敷とかダメじゃねえか」
「葉月は物理攻撃効かない系が無理って言ってたよん。あと、驚かされるのが癪なんだってさー」
「ほんとに女子かよ」
「それな」
「アンタら黙って聞いてれば何言ってんだ。後で覚えとけよ」
「「まあまあまあまあ」」

なんでこんな状況なのか、どうしてこのメンバーなのか、今すべきことは何なのか。色んな事を考えて頭を働かせているとザキと一哉が話し始めた。黙って聞いてたら終いには私をディスり始めた。後で絶対殴ろう。

「健ちゃん、起きて」
「何?」
「ホラゲらしく探索しようよ暇だし」
「俺はパス。古橋連れて行ってきなよ」
「なんで康次郎?」
「原とザキより大丈夫そうだから」
「確かに」
「というか、勝手に動いて花宮に何言われても知らないよ」
「大丈夫大丈夫」
「何が大丈夫なのか分かんないよ」
「それさっき私が言った」
「うん、知ってる」

まこちゃん達が真剣に話をしてるけど正直、状況が分からないから考えても答えは出ないわけで。さっき一哉達が話していたホラゲがどうのって言うのは確かに納得できる話だった。だとしたら初めに目が覚めた場所にはアイテムがあるのがセオリーだ。頭の切れる健ちゃんを連れてアイテム探しの旅に出ようと思ったけどあっさり断られた。

いってらっしゃい、と私の膝から頭を下ろして床に寝転がる健ちゃんは多分もう何を言っても来てくれないから諦めて康次郎に声をかけると話を聞いてた、というか聞こえてたみたいで割とノリノリで立ち上がってた。いつも死んでる目が心なしか輝いてる。ほんとお前もこういうの好きだよね。

「と言っても探せる所なんて限られてるけど」
「出入口の鍵は閉まってたぞ」
「んー、だとしたら…用具室とステージ脇、かな」
「二手に別れるか?」
「それでもいいかも。扉は一応開けといてね、何があるか分かんないから」
「何か起こってくれた方が俺的には嬉しいんだが」
「オカルトマニアは黙ってて。今そういう話じゃないから」
「すまない。こういう体験は初めてで少しワクワクしてるんだ」
「私だって初めてだよ。てか、この状況でワクワク出来るやつなんか世界中探したってアンタくらいだよ」
「…?ありがとう」
「褒めてないっての。バカ」

なにかアイテムがありそうな用具室とステージ脇の収納スペースに向かいながら会話をする。相変わらずのオカルトマニアぶりに頭が痛くなる。この状況で目キラキラさせんなよ…。勝手に動き回ってる私よりよっぽどまこちゃんに怒られてしまえばいいのに。と言っても康次郎はまこちゃん大好きだからむしろ御褒美になっちゃうのか…?ってなに考えてんだ私。気持ち悪い。

「康次郎はステージ脇よろしく」
「あぁ。気をつけろよ」
「ん、そっちもね」

ステージ脇は康次郎に任せて用具室の扉を開ける。古い割に結構すんなり空いた扉にびっくり。もっとギシギシいうのかと思った。後ろから誠凛の女子マネ(仮)の自己紹介する声が聞こえて振り返ったら他の学校の所に言って自己紹介をしてた。

可哀想に。ウチに来たら誰も相手にしない…って言いたかったんだけど多分一哉が面白がるわ。いやでもそれはそれで可哀想だな。まあ何でもいいや。正直あの女が目覚めたっていうここが一番怪しいんだよね。私がこっちを探索したがった理由はそれが大きい。

「…ま、あっちいったらまこちゃんに怒られると思ったから行かなかったってのもあるんだけどね」

2017/11/15 執筆


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