「誠凛の伊月に押し倒されたってマジ?」
「はあ!?押し倒されたあ!?」
「え?それマジっすか!?」
「ザキうるさい。誰情報よ、それ」
「え?花宮だけど?」
「あのクソ眉毛、余計なこと喋りやがって」
「ぶっは!クソ眉毛って!」
「うるせえ!高尾!轢くぞ!」
「なんで俺だけ!」

秀徳と一哉、ザキと一緒に家庭科室の探索に来た。歩きながらニヤニヤ笑って聞いてくる一哉の言葉にザキが大声を上げて、高尾が楽しそうな声を上げる。あの話はまこちゃんにはしてないし、知ってるのは伊月と日向、そして私だけだ。つまり、私の口ぶりから伊月に押し倒されたことを察したか、もしくは話を聞いていたかのどっちかだ。まあ、どっちにしても一哉に伝えたのは完璧に愉しんでるからだ。まじあのクソ眉毛許さん。

「開けまーす」
「てか、ゾンビとの遭遇率低いっすよね」
「低いに越したことねえだろ」
「まあそうなんすけどねー」
「ま、今まで出会わなかった分のツケがここで回ってくる可能性もあるんだけどね」
「うわー...超遠慮したい...」
「高尾も朝倉も余計な事言うんじゃねえよ」
「なんで私なんですか。事の発端は高尾じゃないですか」
「まってなんで俺!」
「どっちもどっちだっつーの!」
「ええ...解せない」
「何がだ!」

家庭科室の扉を開けて中に入る。高尾の言葉に有り得る可能性を口にすると宮地さんに怒られた。事実、というか可能性を述べただけで怒られた。短気は損気ですよ、宮地さん、って言ってやろうかと思ったけど面倒そうだからやめておく。教室に入って真っ先に向かったのは準備室の扉。準備室にまた鏡があれば壊す為だ。今まで鏡を放っておいて得をした試しがない。これに関してはまこちゃんだけじゃなくて赤司や今吉サンも納得した上での行動だ。

隣には一哉、後ろには高尾と何故か付いてきた宮地さん。「なんで来たんですか?」と聞いたら「来ちゃ悪いか?ん?」とすっごい黒い笑顔で言われたから「いえ、別に」とだけ返しておいた。待って、この人超面倒くさい。先輩だから後輩を放っておけないとか何とか言って何かあると真っ先に犠牲になろうとする人だ、多分。内心うんざりしながら準備室の扉に手をかけてゆっくりと開ける。今までと同じようにガタガタッと扉が開く。中を覗くと予想を裏切って鏡はなく、調理器具が棚に並べられていた。

「あれ、鏡ないね」
「ふっつーの家庭科室準備室って感じ」
「鍋とか皿とかが棚にあるってことは...おっ、ビンゴ!包丁とかは引き出しに入ってる!」
「武器にできんな。高尾、1本寄越せ」
「うわ、似合いすぎでしょ」
「おい原、敬語使えよ」
「は?俺ちゃんと敬うべき相手には敬語使うよ?」
「こらこら、それじゃあ宮地さんは敬うべき相手じゃないって言ってるようなもんじゃん」
「お前らなあ...」
「まあまあ!ほら!今はここから脱出するためにも動きましょ!?ね!」

私に続いて準備室を覗いた一哉がつまらなさそうな声を上げる。中に入って棚を見てみるけど真っ赤な宝箱はもちろんそれ以外何かが入るスペースがないくらい所狭しと並べられているのは鍋や皿。引き出しの中には高尾の言った通り包丁や箸、シルバー系が綺麗に整頓されて置いてあった。今までボロボロだったのに突然こんな整頓されて綺麗になってると怪しさが増すんだけど。なんて思ってた私の考えは大正解だったみたいで、「おい!原!葉月!」とザキの焦った様な声が聞こえて、準備室から出ると目の前に広がっていたのはコックの様な格好をしたゾンビ2体が包丁片手にザキ達に襲い掛かっていた。その後ろには何も持っていない5体のゾンビがいた。

「へえ、私たちを料理して食べようとでもしてるって?」
「えー、ザキとか絶対不味いじゃん」
「誰が不味いんだよ!お前も一緒だろ!クソ原!」
「はー?俺よりザキだよね?葉月」
「どっちもどっちでしょ。一哉、包丁二本持ってって片っぽザキに渡して」
「おっけーい。葉月はどうすんの?」
「後ろの雑魚片付ける。前のコック2体はよろしく」
「ほーい」
「高尾は他の奴らこっち側に避けさせといて」
「えっ、葉月さん行くんすか!?」
「は?今更でしょ。よろしくね」
「りょーかいっす。怪我しないように気をつけて下さいね」
「はいはい。言われなくてもわかってるっての」
「もう既に怪我してる人が言っても説得力ないっすよ」
「うっさいなあ。いいから言われたことやれ、バカ尾」
「ぶっは!バカ尾って俺のことっすか!」
「おい、朝倉。俺も行く」
「...は?来なくていいです、邪魔なんで」
「うるせえ!後輩は黙って先輩の言うこと聞け!」
「...はぁ。フォローはしませんからね」

一哉に包丁を二本渡して、指示を出す。楽しそうにザキの方に駆けて行った一哉を見ながら高尾にも指示を出して私も鬱憤発散させてもらおうと一歩踏み出そうとした瞬間、宮地サンから止められる。また先輩だからとか何とか言い出した宮地サンにこれ以上イライラさせられたくなくて適当に返事を返して雑魚ゾンビに足を向けた。

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