正直、宮地サンに背中は任せられないので全方面に注意を配る。と、言っても手強そうなコック二体は原達が何とかしてくれるし、そこそこ距離も離した。飛び道具でも使って来ない限り、アイツらのせいで怪我をすることはない。それにこっちのゾンビに関しては動きがワンパターン。私目掛けて手を伸ばして歩み寄るだけ。五体もいるのに協力して仕留めよう、とかそういう考えができるほど賢くない。何が言いたいかって、雑魚五体なら私だけで十分ってこと。

「っらあ!」
「あっぶねえだろ!」
「だから邪魔だから来ないでって言ったのに...」
「なにボソボソ文句言ってんだ朝倉!」
「なんでもないです、よ!」
「つーか、俺の出番ほぼねえじゃねえか」
「ほぼ、じゃなくてゼロなんですよ」
「んだとコラ」
「ホントの事でしょ。てか、近いです鬱陶しいんで離れてください」
「あ?先輩に対して何だその口の聞き方は」
「敬語使ってるじゃないですか。何が不満なんですか」
「まあまあ!そこまでにしましょ!?ね!?」

イライラをぶつけるようにゾンビに蹴りを入れる。私が蹴り倒したゾンビが宮地サンの方に倒れて、それを間一髪で交わした宮地サンが文句を言う。舌打ちは何とか飲み込んだけど本音がぽろり。目敏く...いや、耳聰く?私に睨みをきかせる宮地サンから目を逸らして倒れたゾンビの頭を潰す。同じような行動を五回繰り返して、楽々倒す。武器持ってないし動き短調だし楽勝楽勝〜、なんて思ってたら宮地サンが当然すぎるセリフを口にする。思わず反応してしまったがもう遅い。どうにもこの人とは合わないみたいで軽い口喧嘩になる。高尾が苦笑い気味で止めに入ってくれたお陰でヒートアップする前に終わった。

「葉月ー!こいつ何回攻撃しても倒れないんだけど!」
「頭狙っても防がれるし何なんだよ!これ!うおっ、あっぶねえ!」
「はあ?知らないっての。任せろって言ったんだから最後までやりなさいよ」
「は!?」
「さっすが鬼マネージャー、きびし〜」
「俺は任せろなんて言ってねえよ!原だろ!」
「おい!助けに行かねえのかよ!」
「は?助けに行く?誰がですか」
「お前だよ!助け求めてたろ!あいつら!」

頑張れ〜と軽く応援しながらドロップアイテムがないか探す私に宮地サンが大声をあげる。口には出さないけど他の三年生も同じことを思ってるみたいで目が厳しい。緑間は何考えてんのか知らないけど私をじっと見据えている。唯一高尾だけが私と一緒にドロップアイテムを探して「ないっすねー。もう一回準備室行きます?」なんて言っている。原達がいる方を指さして一際大きな声を上げた宮地サンに呆れながら返事を返す。

「いやいやいや、助けてなんて一言も言ってませんよ。あいつら」
「なっ...!...本気で言ってんのか」
「本気ですけど?てか、あいつらがあの程度仕留められないわけないじゃないですか。私が手伝いに行く必要性がそもそも分かりません」
「...どういう事だよ」
「だから、私が助けに行かなくても...」

私の言葉に怒りの表情を浮かべる宮地サン。このままだと俺が行く、とでもいいそうだ。それは面倒だし邪魔だから何としても防がなければならない。続けて言葉を紡ぐと、言葉の真意が理解出来なかったのか眉間にシワを寄せて聞き返す。私が簡単に、かつ簡潔に伝えようと口を開いた時、私の言葉を遮るようにドガッと鈍い音がしてあいつらの声が聞こえてくる。

「よっ、と!」
「おらあ!」
「げぇ、コイツらの包丁の威力やっば」
「これ、貰ってくか」
「おっ、アイテムみーっけ」
「鍵?にしてはでかいな...」

さっきの鈍い音はゾンビの動きを止めるための攻撃音だった様で、振り向いた私の視界に入ったのは首から上がないゾンビ二体がゆらりと前後に一度揺れて、そのまま後ろに倒れる瞬間だった。机やら何やらに衝突してガシャーンと大きな音が鳴る。ゾンビが消えたのを確認した二人がいつも様に会話を始める。唖然としている宮地サン達に向き直って、さっき言いかけたことの続きを口にする。

「...仕留められるって事ですよ」
「葉月ー、これあげる」
「なんで私なのザキが持ってよ」
「何で俺なんだよ...まあいいけどよ...」
「そこで持ってくれるのがザキだよね」
「さすがパシられ体質」
「誰がパシられ体質だ。つーかパシってんの主にお前だろ」
「えー?何のこと?」
「白々しいんだよ!」

ニヤリと笑った私はかなり意地悪な顔をしていたのだろう。高尾が顔を逸らして肩を震わせていた。多分こいつは吹き出すのを我慢してる。和やかに、というかいつも通り会話する私たちの後ろで「相手を信頼しているからこその発言ですね」「...あぁ。そうだな」なんて緑間と宮地サンが話していたと後に高尾から聞いた私と原が「えっ、信頼とかないよね?」と顔を見合わせて高尾に爆笑されるのは体育館に戻ってからの話。

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