毎度毎度怪我して帰ってくる私にまこちゃんが心底呆れたような顔をする。いや、私だって怪我したくてしてるわけじゃないもーん。なんて思いながら青い本がトラップだったこと、白い紙が計3つ見つかったこと、特別教室の鍵が見つかったことを伝える。珍しく「休んでろ」なんて優しい言葉をかけてくれるまこちゃんに驚きながら返事をしてウチの連中が騒いでる所に向かう。

「休んでろって言われた」
「花宮にか?」
「うん。珍しいよね」
「いやそんだけ怪我してたらそうだろ」
「ああ。妥当な判断だろうな」
「そんなにひどい?」
「ひどい、と言うか全体的にボロボロになってる」
「ボロボロって...」
「制服がどんどん破れていって最終的に全部服なくなっちゃう、みたいなエロゲあるよね」
「やってんの?うわあ、引くわ」
「やってないし。つーか、エロゲしなくても本物の女子が相手してくれるから問題ないしねん」
「うっわ、相変わらずクズ。ザキ、なんとか言ってやりなよ」
「何とかってなんだよ...」

胡座をかいて座って会話をする。私の姿を改めてしっかり見た皆が微妙な顔をしているから、まあまあひどい恰好なんだろうなと思う。まあ、散々な目に合いましたからね。ガラスで切った掌もまこちゃんのハンカチが巻き付けてあるだけでちゃんと手当てをしたわけじゃないし、さっきの肩の傷もそのままだし、床に転がったり鏡に引きずり込まれそうになったり...ってあれ?思ったよりハードな事してるな、私。

「朝倉さん」
「うおっ、なんだ赤司か...」
「次は俺達が行きます」
「えっ、あっ、うん」
「立て続けに探索に出てもらって申し訳ないんですが、5分後に出発します」
「いや、別に今でもいいよ」
「いえ、少しでも休んで下さい。また5分後に呼びに来ます」
「あ、うん」

後ろから突然声をかけられて、驚いて振り返る。いつもなら気づくんだけど疲れてるのか何なのか全く気づかなかった。次の探索は洛山が行くことになったらしく少し離れた所で実渕達がギャーギャー騒いでいる。相変わらずうるせえ。休んでいてください、とは言われたけど正直この環境でゆっくり休むとかできない。でも、赤司が後ろから来ていたことに気づけなかった辺りは結構やばい。どうにかしてちょっと寝たい。

「なあ」
「...なに」
「アンタ、何で避けれたんだよ」
「はあ?...ああ、さっきのね。なんで?」
「別に。普通の女にしては動体視力良すぎだろって思っただけだ」
「あぁ、そういう...。てか、普通の女ってあの子基準でしょ?あの子に比べたら私100倍くらいは運動神経いいと思うよ」
「あ?さつきは関係ねえだろ」
「はい?その子のことだなんて一言も言ってませんけど?」
「チッ、うっせえな」
「はいはい。で?なんで此処に来たの?それを言いに来ただけじゃないでしょ」

どうにかして一瞬でも寝れる方法を考えていると後ろから近づく気配。私の後ろでピタリと止まって、かけられた声は探索中にほぼ聞いていなかった奴の声。恐らく聞きたいのは、私が偽物なんじゃないかって疑問。でもそれじゃあストレートすぎるからちょっと遠回しに聞いてみよう、みたいな感じかな。だとしても遠回しにすらなってないから面白い。

それに、桐皇のあのピンク髪の女の子に少なからず友人以上の感情を持っている青峰はやっぱり頭の弱い子だったようで簡単に揚げ足を取らせてくれる。眉間にシワを寄せて嫌そうな顔をしているのを見て愉しいと思っている私も中々にやばい奴であることは明確だった。後ろで一哉達が「うっわー、意地悪な顔ー」とか何とか言ってるから口角も上がっているんだろう。

「偽物探しの続き、してきたら?」
「...は?」
「私のこと、偽物だと思ってたんでしょ?」
「分かってたのかよ」
「まぁ、あんたバカだし」
「あ!?」
「ただあんたの大好きなさつきチャンも偽物かもしれないってこと、覚えといた方がいいんじゃない?」
「どういう意味だよ」
「さあ?自分で考えたら?」

人間は自分と違うもの、周りと違うものを仲間はずれにしようとする。だからラフプレーをする私達に対しておかしいって感情が出てくるんだ。でもそれは自分達の小さな世界の中でしか生きようとしていないからで。まあ、つまり何が言いたいかってここにいる全員に偽物の可能性がある以上偽物探しなんて無駄なだけだよ、ってことなんだけど、それを理解出来てないんだろうなあ。

「ふっ...」
「うわ...すっごい悪い顔...」
「ほんと、たーのしい」
「この状況で楽しいと思えるのすげえわ...」
「状況そのものは楽しくねえよ。全く楽しくねえよ。楽しいのはおバカさん達を挑発することだよ」
「どっちにしたってクズであることに変わりはねえよ」
「はいはい、ありがと」
「褒められてないと思うけど」

納得いってません、と言わんばかりの表情で帰っていく青峰を見ながら抑えきれなかった笑みがこぼれる。隣で一哉が引いたような顔で見てくるけどほんとにこればっかりは笑うしかない。クズだとか言われ慣れてるし、ついでに言えば褒め言葉だと思えるくらいには自覚もしてる。ザキの言葉に軽く返したら健ちゃんにつっこまれた。健ちゃん最近ツッコミスキル上がってきたね。あとオカンスキル。

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