「ほんっと男共ったら気が利かないんだから!」
「...そうだね」
「手、痛くない?大丈夫?」
「いや、うん。全然大丈夫だから離して」
「もう、つれないわね」
「はあ...」
「ため息つくと幸せが逃げちゃうわよ?」
「いや別に幸せとかどうでもいいから...てか、近いうるさい離れて」
「ほんと素直じゃないんだから」
「赤司...コイツまじで何とかして」

探索に出て早々、隣に立って話し始める実渕にイライラしながら返事をする。こちらの様子など一切気にせずに前を歩く赤司とまこちゃんはつくづく薄情者だと思うんだ、私。ザキはザキでちょっと離れた場所から見守ってるだけ。ほんとマジでありえない。頑張れ葉月、みたいな顔してんじゃねえよ助けろ。

さっきまで手に巻いていた花宮のハンカチは実渕の手から花宮に返却されて、今私の手には実渕の白いハンカチが巻かれている。実渕曰く「包帯はいつでも新しい方が清潔だから」らしい。まあ、とどのつまり花宮のハンカチを手に巻いてからしばらく経つし、なんならその状態で色んなものに触れてきたわけで。そんな状態じゃ折角包帯代わりに巻いてるのに衛生面も何もあったもんじゃないぞ、ってことだ。

「まこちゃん、ハンカチありがと。後で新しいの買ってあげるね」
「何当たり前の事言ってんだよ」
「あっ、ですよね。てか、なに?おこなの?」
「あ?」
「はいはい、睨まない。眉間のシワ取れなくなるよ」
「うっせえ、触んじゃねえよブス」
「ツンデレか」
「ぶふっ」
「誰がツンデレだ犯すぞクソ女。ヤマも帰ったら覚えとけよ」
「おーおー、怖い怖い。ザキ、ごしゅーしょーさま」
「半分以上お前のせいだからな」
「え〜?何のことか葉月わかんな〜い」

前を歩くまこちゃんの隣に立って声をかける。すっごい機嫌悪そうな顔で歩いてるもんだから茶化してみたらいつもの3倍くらい悪人面で睨まれた。まこちゃんの前世は般若か何かかなってレベルで中々に怖かった。眉間のシワを伸ばすように、背伸びをしてまこちゃんの額に触った瞬間、叩かれた。痛い。ボソリと呟いたツンデレの言葉にザキが吹き出して笑っててつられて笑いそうになったけど何とか抑えた私は勝ち組。

「ここもダメ、となるとこの鍵は保健室の鍵で間違いなさそうですね」
「保健室かー!ゾンビ出るかな!どう思う?葉月!」
「私に聞かないで。つーかうるさい、黙れ」
「そうよ!葉月ちゃんは疲れてるんだからアンタが騒いだらもっと疲れちゃうじゃない!」
「実渕もうるせえよ...」
「カリカリしすぎだろ、お前。腹でも減ってんのか?」
「アンタと一緒にしないで!」
「...はあ」
「大丈夫か?」
「うわっ。...大丈夫そうに見えますか」
「見えないな」
「その通りです。いつもこんな感じなんですか、洛山って」
「まあ、今の赤司になってからはこんな感じだな」
「へえ...疲れないんですか」
「疲れるに決まってるだろ」
「ですよね」
「おいブス。無駄口叩いてんじゃねえよ」
「機嫌悪いからって私に当たらないでもらえますかね?クソ野郎が」
「保健室、開けますね」

赤司の言葉に楽しそうに目を輝かせて飛び跳ねる葉山と、それを咎める実渕、この状況で意味の分からないことを言う根武谷。本当にうるさい。無冠の五将はどいつもこいつも面倒でウザったい奴しかいないのか。つくづく一緒にいるのが花宮でよかったと今心の底からそう思った。無冠の五将の他のメンバーと毎日顔合わせるとか死んでも無理。むしろ殺せ。

隠すこともせず盛大にため息をついた私に突然話しかけてきた黛さんに驚きつつも返事を返す。ほんとに影薄いんだな、この人。まあでも洛山の中じゃ比較的話しやすいし、馬鹿じゃないし、イイコちゃんじゃない。黛さんと話をしながら先頭を歩く赤司とまこちゃんの後ろを歩いていると、まこちゃんが振り返る。勿論、毎回恒例の暴言付き。いい加減にしろよお前。毎回毎回ブスブス言いやがって。お前と同じくらいモテんだぞ、世間一般じゃ美人と称される顔だぞ。ぶっ飛ばすぞ、愉快な眉毛しやがって。とまでは言わないけど心の中では言わせていただく。

「保健室って割には汚いな」
「まあ、廃校ですし」
「それもそうだな」
「おい、行くぞ」
「は?どこに?ちょ、なに?」
「いつまでも喋ってんじゃねえよ、働け」
「...あ、分かった。私が黛さんにばっかり構うから拗ねてるんでしょ」
「そうだったのか。悪かったな、花宮」
「んなわけねえだろ!しね!」
「はいはい、真くんはツンデレちゃんでちゅね〜」
「マジでしね」

赤司が保健室の鍵を開けて扉を開ける。全員中に入って扉を閉める。保健室の中を見回してみてもかなりボロい保健室って感じで特に変な部分はない。黛さんと話しながら棚を覗いていると、まこちゃんに腕を引かれる。茶化したらマジでキレられた。いや、そんな怒る?まあ、私がその程度でめげる女じゃないことはまこちゃんがよく知っている。懲りずにまこちゃんをイジり続ける私に黛さんが呆れた目を向けていた。

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