いざ倒そうと向き直った5体のゾンビがぐにゃりと歪んで姿が変わる。見慣れたあいつらの姿に変わったゾンビに思わず引き攣った笑いがこぼれる。あいつらの姿なら私も手こずるだろうとか思ったのかな。考えが甘すぎる。

「別にあいつらに攻撃加えることに関して罪悪感とかないんだよねぇ…」

むしろあいつらに正々堂々攻撃できるとか最高に面白い展開だと思うんだ。先頭にいる一哉とザキを転ばせて、その後ろにいた康次郎の腹に蹴りを入れる。後ろに倒れた康次郎が健太郎とまこちゃんを巻き込んで倒れる。なんか、アイツらにしては間抜けすぎて全然楽しくない。

起き上がってこっちに向かってくる一哉とザキにも同じように蹴りを入れる。倒れたザキと一哉の頭を潰して、まず2体仕留める。後ろから手を伸ばしてくる古橋を躱してその後ろにいた健太郎の足を払って膝を付かせる。低い位置に来た頭を蹴り飛ばせば3体目撃破。

「ふっつーに疲れるんだけど…」

とりあえずまこちゃんにはこっちの世界に来てからボロクソ言われててかなりムカついてるので思いっきり殺らせてもらうことにする。少し離れた位置にいたまこちゃんに助走をつけて思いっきり飛び蹴りを食らわせる。後ろにいた康次郎にはオマケで回し蹴りをして、倒れた2体の頭を潰す。

全部倒してさっきまで男の子たちがいた方を向いて目を見開く。さっきまでいた彼らはどこに行ったのか、忽然と姿を消していた。鬼である彼らを見失ったのはかなりまずい。後ろからタッチされましたとか割とシャレにならない。全神経を集中させて気配を探していると、聞こえてきたのは笑い声。

『今のが本物だったらどうする?』

『今のが本物だったらどうする?』

『お姉ちゃんが殺した』

『お姉ちゃんが殺した』

笑い声の後に聞こえてきたその声に思わず腹を抱えて笑ってしまった。私が笑う声だけが響いて、彼らの声がピタリと止む。あぁ、おかしい。何となく犯人の考え、というか目的みたいなものが見えた気がする。そんなもので私が崩れると思ったら大間違いだ。むしろその手は私含め、霧崎の得意分野だ。

「はー、笑った笑った。今のが本物のあいつら?まさか!あいつらがこの程度で殺られる訳ないし?正直、普通のゾンビ相手にするより楽しかったわ。ストレス発散、的な意味でね」

彼らに向けて、というよりこの状況を見ているであろう犯人さん達に向けて口を開く。ちょいちょい鼻で笑っちゃってるけど、鼻で笑わざるを得ないレベルでバカバカしい。精神的に攻撃を加えようとしたんだろうけど、精神攻撃はいつも受けてるからさぁ…。今更なんだよねえ。

「毎日ラフプレーがどうのって文句言われて、私を僻んでくるバカ女たちに陰口言われて、メンタルだけはものすごく鍛えられてんのよね。それに、そもそも私とあいつらの関係って友達だとかそういう綺麗な括りじゃないから。今みたいなやり方をするなら他の学校の奴らの方がオススメだよ」

追手がいなくなった以上、彼らが私を追いかけてくることは不可能。いつまでもこんなアホみたいな所にいられるか。いい加減に元の場所に私を帰してくれませんかね、と何も無い空間を睨みつける。どうせどこかで見てるんだから私の姿も表情も全部見えてんだろ。

「私の勝ちね」

そういった瞬間ぶわりと視界が真っ白になる。眩しさに目を閉じて、次に目を開けた時には体育館だった。あ、やっぱり意識飛んでたんだ。手をついてゆっくり起き上がれば近くにいたザキが驚きながらも支えてくれる。さすがザキ、こういうところは優秀。

「ずっと魘されてたけど、大丈夫か?」
「夢の中でお前らの頭潰してきたわ」
「…はぁ?」
「いや、だよね。そうなるよね」
「起きたのか、葉月」
「おはよ」
「あぁ、おはよう」
「呑気に挨拶してる場合かよ」

起き上がって今の状況を見て、私が寝ていた場所と私の上に置かれているブレザーに気づく。離れた場所で赤司や今吉さんと話をするまこちゃんとザキはブレザーを着てる。という事は、ブレザーを着ていない康次郎とこの場にいない一哉か健太郎…いや、健太郎だな。康次郎と健太郎のブレザーをたたんで、康次郎に一つ返す。現実世界なら洗って返すけど、この世界で洗濯とか普通に無理がある。

ザキに状況を聞けば、あの女の提案で探索に行くことになったらしい。あぁ、だからあいつらいないんだ。ドンマイすぎるし、草。それを聞いてケラケラ笑った私をザキはやっぱりな、みたいな目で見てた。とりあえず、意識飛んでる間に私がしてた事を話さなきゃなあ、と思っているとナイスタイミングで後ろから声をかけられる。さすが、まこちゃん。空気の読める男は違うねえ。

「はいはい、説明ね」
「分かってんなら起きた時点ですぐ来いよ」
「状況把握位はさせてほしいんですけど」
「んなもん時間かからねえだろ」
「お前の頭と一般人の頭を一緒んにすんな、眉毛引っこ抜くぞ」
「どこに一般人がいんだよ。お前人間じゃねえだろ」
「うるせえ。赤と白のボールで捕まえんぞ。草むらから飛び出してきたような顔しやがって」
「どんな顔だよ。おいザキ、何笑ってんだ」

私がひとつ言えば倍にして返してくる花宮に、同じように倍にして返す。さっきまで意識飛んでた人に対して労りの言葉とかはないんですかね、この極悪非道人め。お互いをディスり合いながら頭脳組の元へと向かう。警察の事情聴取みたいだな。このメンバーに尋問される犯人かわいそすぎ、乙。と言って笑ってやりたいところだけど、今回その役目は私のようだ。嬉しくない。

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