(side:H)

誠凛とあの女の子、そして瀬戸と一緒にやって来た校舎の二階。いつも通りなら前に探索に行った保健室から鍵が見つかるってパターンだったから、今回もそうだと仮定して保健室に向かう。もちろん、そう提案したのは俺と瀬戸。誠凛の奴らなら片っ端から見て回ろう、みたいなバカな考えしてたよ。

「あ、そういえば伊月、葉月の事押し倒したんだって?」
「なっ…!」
「綺麗な顔してヤることヤってんだね」
「俺は朝倉さんを助けただけで、お、押し倒したとか、そういうんじゃ…!」
「おー、必死だねえ」
「原、鍵あったよ」
「あり?早くね?」
「ベッドの脇に落ちてた。多分此処が花宮の話に出てた男の子達がいたとこなんでしょ」
「敵が出た場所にはアイテムが落ちてる法則ね。おっけーおっけー、んじゃその鍵が使える教室探そー」

ガラリと保健室を開けて真っ先にベッドに向かった瀬戸を眺めながら近くに来た伊月に声をかける。体育館でめちゃくちゃに弄ってやっても良かったんだけど、わざわざ誠凛のとこまで行くのも面倒だし、そこまでする必要もなかったから黙ってたけど、この状況でその話を振らない理由はないよね。ニヤニヤと笑いながら聞けば、顔を赤くして必死に弁解してくる伊月に笑いが止まらない。葉月の事だから押し倒されたことすらネタにして伊月を揶揄うんだろう。うわ、めっちゃ想像つくわ。

伊月を揶揄って楽しむ俺を放って探索してたんだか、ベッドで寝ようとしたのか知らないけど瀬戸があっさり鍵を見つけてきた。多分もうこの教室には何も無いから次の教室へレッツゴー、と保健室の扉をガラリと開ければ慌てたように着いてくる誠凛。ほんと頭回んないよね、こいつら。なんで俺このメンバーで探索してるんだろ。超面倒だしダルいし早く帰りたいんだけど。頭の後ろで腕を組んで瀬戸の隣を歩く。保健室から一番近かった第一理科室はハズレで、次に近い職員室は当たりだった。カチャリと軽い音がして鍵が開く。瀬戸が扉を開けて中を覗き込む。

「なんかあった?」
「いや、壁に飛び散った血さえなければ普通の職員室だね」
「うわ、ほんとだ。すっげえ」
「…なんだよ、これ」
「さっさと探索して戻りましょう。姫さんの顔色も悪いので」
「わ、私は大丈夫だよ!」
「ダァホ、大丈夫ならもっと大丈夫そうな顔しろ。無理すんじゃねえ」
「この椅子なら座れそうだし、休んでたらいいんじゃないか?」
「日向先輩…木吉先輩…ありがとうございます。でも、大丈夫です!私、頑張ります!」
「…無理そうだったらすぐに言ってね」
「はい!ありがとうございます、伊月先輩!」

後ろから聞こえてくる会話を完全スルーして瀬戸とそこら辺の棚を探る。出てくるのは血?インク?がぶちまけられた読めない資料。読めないってことは読む必要が無いものと認識して元に戻す。何かヒントになりそうな物、もしくは武器がないか探る。あ、もちろん前に見つけたノコギリだとか包丁は持ってきてるよ。

「てかさあ、これ俺らにとって得になるものならもっと分かりやすく置かれてるよね?」
「…なら、この辺りにある普通の資料は見なくてもいいってことか」
「多分ね。もしそれっぽい物が一つもなかったら全部見なきゃいけないだろうけどさ」
「なら、とりあえずそれらしい物を探すか」
「おっけーい。ってことだから誠凛さんも宜しく〜」
「…あぁ」

棚に並べられた資料から必要な物を探す、ということは図書室とかやばいんじゃない?ってことに思い当たって、よくよく考えてみれば今までの探索で見つかったヒントは全部分かりやすかった。つまり、今回も同じである可能性が高いということ。それを瀬戸に伝えれば納得した様に頷いて、今まで見ていた資料を閉じて棚に戻してた。近くで探索してた誠凛の主将によろしく、と言えば俺に指示されるのが気に食わないと言ったような返事。ほんと俺らのこと嫌いだよね、ウケる。

「おい、黒子!これ!」
「これは…」
「どうした?」
「先輩、これって…」
「青い紙?」
「何か見つけたのか」
「うおっ!あ、あぁ。『扉を閉めろ』って書いてある青い紙だ」
「『扉を閉めろ』…?つーか、青い紙ってこのまま置いてあったの?」
「ここに挟まってたんだよ」
「…おかしくね?」
「今まで通りならこのまま置かれてるって事はまず有り得ないな」
「誰かが先に見つけて置いたって線もないとなると、初めからこの紙を持ってた誰かが置いてったってことだよね」
「俺たち以外にも誰かいるってことだな。それも、俺たちの仲間ではない誰かが」
「おい!どういう事だよ!」
「俺達にも分かるように説明してくれないか?」

火神が見つけた青い紙に全員の視線が集まる。あの女の子が少し離れたところで恐る恐るこっちの様子を伺ってるのがちょっと気になるけど。紙に書かれて内容だけじゃなく、何でこの紙がここにあるのか。考えられる可能性を瀬戸と挙げて、俺達の中で答えを導き出す。俺達の会話が理解出来なかったのか火神と木吉が教えろと言い出す。面倒臭いなあ、と思いながら口を開こうとした時、すぐ近くで悲鳴が聞こえた。

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