「まこちゃんこれあげる」
「あ?んだよ、これ」
「知らん。用具室とステージ脇で見つけた」
「何してるかとか思えばそういう事か」
「あの出入口は開かなかったけど鍵穴はあったから鍵探すのかな、とも思ったけど探す場所とかもう無いからさー。とりあえずこの本?開いたらなんか分かるかなって」
「なるほどな。どうする、赤司。開けるか?」
「開けましょう。朝倉さん、古橋さん、ありがとうございます」

まこちゃんに康次郎が見つけてきた本?と私の見つけた鍵と白い紙を渡す。白い紙の中身を見たまこちゃんが嫌そうな顔をしていた。私もその顔になった、わかる。見つけてきたアイテムに一通り目を通した後、赤司は顔を上げてお礼を言いながら軽く頭を下げた。

思わずあ、うん…と気の抜けた返事が出てしまった。いやだってあの試合の時の赤司見てた人ならみんなこうなるでしょ。あれ?バスケって人の人格にまで影響を及ぼすスポーツでしたっけ?ってレベルで人が変わった、ような気がする。直接関わったことないから知らんけど。てか何で名前知ってんだ…?

「じゃ、後は任せた。頭脳班!」
「葉月は頭脳班じゃないのか」
「まこちゃんと健ちゃんがいなかったら頭脳班でもいいけど」
「朝倉さん頭いいんすか?」
「普通だよ、普通」
「学年3位だ」
「いやいやそれ普通じゃないでしょ!」
「私が普通って言ったら普通なの」
「横暴すぎっしょ!」

「あ、あの!」

まこちゃん達に見つけたものを渡して元いた場所に向けて歩きながら話す。勉強ができる頭良い、と謎解き系で頭が良いは別問題なんだよ。ま、だからって出来ないわけじゃないけどね。そんな私達の会話を遮って響いた高い声。うわぁ…最悪…。

「私、誠凛高校一年の西条姫香です!姫って呼んでください!よろしくお願いします!」
「…高尾、パス」
「右に同じく」
「まじすか!あー、秀徳高校一年の高尾和成でーす!よろしくな、西条さん」
「あの、えっと、その…」
「ほら、古橋さんも朝倉さんも自己紹介しましょ!」
「えー、めんどくさい」
「右に同じく」
「古橋さんさっきからそれしか言ってないし、朝倉さん顔死んでるし」
「あの、その、同じ女の子だから、仲良くしたいな、って…」
「…?同じ女の子?」
「おい康次郎誰見てそのセリフ言ってんだ」
「そういう所だぞ」
「もうっ!古橋くんってば!葉月、泣いちゃう!」
「アウト」
「私も無理だったけど即答にも程がある」

挨拶回りに来た西条サンを高尾に押し付けて康次郎と話す。無理無理、あんなの相手できませーん。なんて思ってるとあだ名呼びを強制させられそうになった高尾がこっちに話を降ってきた。おい、そっちで解決しなさいよ。康次郎だけじゃないけどウチの連中はぽんぽん会話が進むからついついアホな方向に話が進んじゃう。その結果、私と康次郎の自己紹介待ちをしている西条サンはおいてけぼりな訳で。あら?これはこれでいい気味なんじゃない?

「あの!」
「あー何だっけ西条サン?私より他の女の子と仲良くなりなよ」
「私は、朝倉さんとも仲良くなりたくて…」
「ふうん…ま、なんでもいいや。名前知ってるなら教えなくてもいいよね。よろしく、西条サン」

まだ話しかけようとする西条サンに背を向ける。そういうぶりっ子ちゃんはもっとイイコにやらないと効果ないから。私はそういうの嫌いだから私と仲良くなりたいなら私好みになってから出直してきてほしい。だからといって仲良くするかどうかは知らないけれど。
後ろで康次郎と高尾が絡まれてるけどあの2人なら多分何とかするから大丈夫だと思う。

「おかえりー」
「ただいま」
「葉月も絡まれてたね〜」
「も、ってことはやっぱりココにも来たんだ」
「姫ちゃんでしょ?面白いね、あの子」
「面白い…?」
「なんでも言うこと聞いてくれそうじゃん」
「あぁ、そっち?じゃあ彼女にでもしてあげたら?」
「んー顔はまあまあだけど声のトーンが好きじゃないんだよねー。声がダメだとヤる時つまんないからさー」
「一哉の性癖とか超どうでもいいね」
「遊びに行こうだとか誘っておいてよく言うよな」
「社交辞令だって、とりあえずそう言っとけばそこら辺の女子はキャーキャーしてくれるし?あ、ザキには縁遠い話だったね、めんご!」
「くっそムカつくんだけど」
「はいはい喧嘩しない。ザキもいちいち一哉の言うことにくってかかるから一哉が面白がるんでしょ」
「もー、ほんと葉月つまんないー」
「つまんなくて結構」

「みなさん、少しよろしいですか」

霧崎のメンバーが座ってる場所に戻ってきて健ちゃんの隣に座る。一哉とザキの近くはうるさいから座りたくない。当然だけどあの子はココに来たらしい。ザキ曰く、健ちゃんは完全無視。寝てたんだか知らないけどあの子の自己紹介にも一切返事を返さなかったらしい。さすがだ。

ザキは普通に自己紹介しあってる所に一哉が乱入してきてナンパ紛いのことをしてたらしい。ほんとに女子漁るの好きね。話をしていると赤司のよく通る声が体育館に響く。健ちゃんがその声に反応して起き上がる。やっぱりコイツ起きてたくせにあの子の自己紹介無視したな。

2017/11/20 執筆


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