教室で見つけた白い紙。それに書いてあったのは私と赤司が放送室で聞いたことで立てた仮説を決定づけるものだった。見つかった白い紙3枚。

『あの男も悪い奴だ。騙される方も騙される方だが、どちらの気持ちも全く理解ができないし、たかが女一人の為に命をかけるような男の気持ちなんて知りたくもない。まあ、私の研究に力を貸してくれるという点では利用価値はある』

『既に鍛えられた精神の持ち主である全国区バスケットボールプレイヤーならこのゲームをクリアしてくれるのではないか。キセキの世代とそのチームメイト。彼等なら私の研究を成功させてくれる者になってくれるだろう』

『一度死んだ人間が生き返ることなんて不可能。それなのに、あの女はそれを信じている。本当に憐れな女だ。それに、あんな気味の悪い男に好かれているあの女も憐れだ。結果がどうであれ、この世界に負のエネルギーを与えることが出来るのだから』

恐らく、誠凛の生徒だと言っていた西条姫華はこの世の人間ではない。そして、彼女は我々を此処に連れてきた犯人の内の一人に、私をこの世界で殺すことで私と入れ替われると騙されている。犯人は二人いて、その内の一人は私が狙い。もう一人は自らの研究の為に我々をここに連れてきており、この世界を作り上げたのも同一人物。

私達にとって有利になるアイテムが用意されていたのは何故?犯人達は何が目的でこの世界を作り出した?そこまで考えて一度息を吐く。今回見つけた紙は彼女の前で読まない方がいいのだろうか、それとも読むべきなのかと考えて、ゆっくりと紙をポケットにしまった。話すなら、体育館に戻ってからでも遅くないだろう。

「なに、も起きないですね…」
「まだ見つけてないものがあ(る)のか?」
「まだ探してない場所があるとか?」
「その可能性はあるね。例えば…あそことか」
「…マジかよ」

今までなら、このタイミングで現れていたであろうゾンビが現れないことに西条サンが首を傾げる。早川と黄瀬が首を傾げる姿を見て私はニヤリと口角を上げて、とある場所を指さした。その指の先を見た黄瀬が顔を青くする。隣ではザキが嫌そうな声をあげていて、思わず笑ってしまった。

「学校の怪談といえばトイレ、でしょ?」
「マジで言ってんのかよ…」
「なに?ザキちゃんビビってんの?」
「普通に気味悪いだろ。つーかお前、女子トイレどうすんだよ」
「西条サンと行くけど?」
「…大丈夫なのか?」
「へーき。やばくなったら呼ぶから来てね」
「それは別にいーけどよ…」
「あ、ザキくんは女子トイレに入るの恥ずかしいでちゅね〜」

嫌そうな顔をするザキを一哉がいじればため息混じりの返事。男子トイレは海常とザキ、一哉がいるからいいとして、女子トイレの探索には私と西条サンしか行けないことを心配したのかザキが小声で口を開いた。それにへらりと笑って返せばまたため息混じりに返事をして、頭をかいていた。そんなザキを一哉がまたいじっていつもの様にぎゃあぎゃあと騒ぎだす。

確かにザキが心配してくれたとおり、割と危険な橋を渡ることになるのは確かだ。何故なら、西条サンの目的は私と入れ替わること。つまり私がこの世界で死ねばいいのだから、偶然を装って殺しにくる可能性が高い。そして、二人きりの狭い空間となれば彼女にとっては大チャンスだ。罠が仕掛けてあった、などと言って私をナイフで刺せばそれで済む。

仮に疑う者が現れたとしてもウチの連中と赤司、今吉サンくらいだ。というか、もし仮に全員が彼女を裏切り者認定したとしても私は死んでるから脱出は不可能なのだが。何やら話をしている笠松サンをぼんやりと見ながらそこまで考えてため息をつくと、隣で一哉が「葉月、話聞いてなかったっしょ?」と笑う。「なんて言ってた?」と返せば「やばくなったら呼べだってさー」と軽く返ってくる。

「姫ちゃんと葉月ちゃんの二人だけで探索に行かせるなんて…心配すぎる!笠松!やっぱり俺も女子トイレに…!」
「うるせえ!!!いいから黙ってこっち来い!!!」
「笠松は心配じゃないのか!?こんなか弱い乙女二人をゾンビが出るかもしれない狭い空間に行かせるなんて!」
「森山先輩、それフラグっス」
「黄瀬は黙ってろ」
「お前が黙ってろ森山ァ!」

「…キャラ濃いな」
「それな。つーかマジで気をつけろよ?理科室の二の舞は許さないから」
「分かったって。顔怖いし近い」

いざ探索に向かおうとした途端、声を荒らげる森山さんに足を止めた。笠松さんに必死に訴えかけるその姿に正直引いた。いやなんでアンタが女子トイレ行きたがるんだよ。顔を赤くして森山さんに蹴りを入れる笠松さんははたして何に照れているのだろう。まさか女子という単語だけでもダメなのか。海常キャラ濃すぎだろ、と小さく呟けば後ろにいた一哉が口を開く。肩に腕を回して話す一哉の声のトーンの低さに笑えねえ、と頬をひきつらせた。


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