「先程、霧崎の朝倉さんと古橋さんが見つけてきてくれた鍵と本がきっかけで新しく鍵を入手する事ができました。

恐らくこの鍵はこの体育館の出入口の鍵と見てほぼ間違いなさそうです。そして扉の先はこの学校の校舎だと考えられます。しかし、この奇怪な状況から考えると何が起きるか分かりません。

危険だからといつまでもここにいる訳にも行かないので探索班を作りたいと考えています。そこで、頭脳的にも体力的にも臨機応変な対応が期待できる霧崎第一の皆さんにお願いしたいのですが良いですか」

淡々と語る赤司の言葉には一切疑問形がなくて、最早行けって言ってるじゃん、と隣で一哉が笑ってる。うん、私もそう思う。まあ、探索班が作られることもこのメンバーで何かが起きた時何の躊躇いもなく行動を起こせるのはウチくらいだから。一発目に行ってこーいってなるのは何となく予想してた。

「葉月」
「私は行くからね」
「はぁ…」
「ほんまに花宮が言うてた通りやん」
「だから言ったじゃないですか。アイツは行くって言いますよって」
「分かってるのに止めようとしたの?」
「一応だ、一応」
「ま、何でもいいけどさ」
「葉月行くの?」
「当たり前じゃん。この体育館に私1人置いてけぼりとか無理死ぬ」
「死にはしないだろ」
「ザキは分かってないなぁ。考えても見なよ?誠凛に親の敵を見るような目で見られて?他の学校にも同じ様に敵を見るような目で見られて?終いに相性最悪な女共がいる場所に放置されて私のメンタル無事で済むと思ってる?」
「いや葉月なら平気だろ」
「は?何だって?」
「ナンデモナイデス」
「だよね。そうだよね。よかった、わかってくれて」

まこちゃんがこっちを見て私の名前を呼ぶ。はい来ると思ったー!私は絶対行くからな!私がそう言うって分かってたのにわざわざ聞いてくるなんてまこちゃんらしくもない。まあ多分、というか確実に今吉サンのせいだと思うけど。げ、あの人こっち見てる、怖すぎ。私の言葉に他校の面々がザワザワし始めて、赤司がそれを宥める。今吉サンと赤司が皆に何かを話している中で、一哉とザキとコソコソ話をする。ぶっちゃけこのメンバーの中に放置されるとか耐え難い拷問だから、まじで勘弁して欲しい。

「開けるぞ」
「これで開かなかったらウケるよね」
「一哉、それフラグ」
「葉月もフラグとか言うの止めろよ…」
「何だ、ビビってるのか?ザキは」
「ま、この中じゃ一番ビビりだし」

まこちゃんが鍵を持って扉の前に立つ。後ろから色んな視線が刺さってくるけどそんなのを気にするような神経の持ち主は生憎ウチにはひとりもいない。全員いつも通りに会話をしながらまこちゃんが鍵を開けるのを見つめる。カチリと軽い音がして鍵が開いた。よし、これで一哉のフラグは折れた。

「行くぞ」
「りょーかーい」
「幽霊でも出そうだな」
「楽しそうだな、お前」
「葉月、大丈夫?」
「えっ、こんな暗いの?ちょう怖いんだけど」
「あれ?葉月ちゃん怖いんでちゅかー?」
「うん…葉月、暗いの苦手だから怖いの…守ってくれる?」
「「「アウト」」」
「全員即答かよ」
「バカやってないで行くぞ。葉月、こっち来い」
「ほーい」

扉の向こうは想像していたよりも暗くてちょっと、と言うか普通に怖い。えー…これでお化けとか出てきたら死ぬかもしれない。怖い。オカルト大好きな古橋がワクワクしてるし、一哉とザキもホラゲみたいだと楽しんでるし、健ちゃんは興味無さそうに欠伸をしてる。まこちゃんも当然怖いなんて思ってない。ウチの連中のメンタルどうなってんだ。

茶化してくる一哉を上目遣いで見つめながら、手を胸の前で組む。語尾を伸ばすように少し高めの声で話せばあら不思議、ぶりっ子ちゃんの完成。それを見た瞬間さっきまでヘラヘラしてた一哉とザキ、隣で見てた健ちゃんの3人が真顔でバッサリ切り捨てた。だよね、このタイプはみんな嫌いだからね。分かる分かる。

「まこちゃん、寒いし暗いし怖いし最悪なんだけど死ぬ」
「自分で来るって言ったんだろ」
「うう…あっちにいるよりマシだけどさあ…」
「ったく、これでも着とけ」
「わーいありがと。萌え袖通り越して手出てこないけど」
「お前がチビなだけだろ」
「まこちゃんだってウチの中じゃちっちゃいくせに」
「何だって?」
「まこちゃんだってウチの中じゃちっちゃ、いった!?ちょ、痛い痛い!」

まこちゃんの後ろを歩きながら思ったことを口に出す。ため息をついてこっちを見るまこちゃんが自分のブレザーを脱いで貸してくれる。あったかーいけど手出てこないんだよなあ…サイズ的に。私よりはかなりでかいけど霧崎の中だとちっちゃいんだよね、まこちゃんって。事実を述べたら思いっきり頭を掴まれた。脳みそ飛び出るかと思いました。

「どこも全部鍵閉まってて開かないし階段もシャッター降りてて上に行けないしだるいね」
「ほんとにホラゲみたいだな。職員室に鍵とか仕掛けがあったりして」
「こんな非現実的な状況なんだし、非現実的な現象でも起きてくれたら面白いんだがな」
「原と古橋のは置いといて、ザキの話は有り得るかもね。どうする?花宮」
「とりあえず突き当たりまで歩いて入れる教室は入って探索、って感じでいいだろ」
「お化け屋敷みたいで非常に気に食わない。怖いんだけど」
「でも体育館で待つのは嫌なんでしょ?」
「嫌だよ!健ちゃんはあの場に放置されても寝てられるから問題ないだろうけど私には問題大ありなの!」
「俺だってあの状況で寝れるほど図太くないよ」
「寝た振りで西条サン完全無視してたくせによく言うよね」
「ほんとに寝てるのと寝た振りは別物だからね」
「そういう事じゃないんだよ、天才バカめ」
「褒めてるのか貶してるのかどっち?」
「貶してる」
「褒められてるような気がしたけど気のせいだったね」
「気のせい気のせい」

2017/11/21 執筆


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