少しして本棚から見つかったのは白い背表紙の大きめの本。どちらかと言えば絵本に近い形状で、表紙には何も書かれていない。一つだけ異様なオーラを纏ってるこの本が何らかの鍵になっていることは明白だった。離れたところで探索をする秀徳にも声をかけて一度図書室の真ん中に集まる。ゆっくりとページを捲ると目に飛び込んできたのは真っ白なページ。

「白紙、じゃないな…」
「この色…」
「俺たちじゃん」
「え、何?どういうこと?」

白紙だったページが徐々に色付く。描かれる絵は子供の落書きのような絵でかろうじて、書かれているのが人と認識できる程度のものだ。ページいっぱいに書かれた人と思わしきものの色を見て気付く。私たちが着ている制服と同じ色だと。所々にある赤や緑や青は恐らくキセキの奴らの髪色。学校ごとにまとまって書かれたその絵は見覚えしかない。私と健太郎と一哉は理解したが高尾は理解できなかったようで首を傾げている。顔を見た感じ秀徳で気付いたのは緑間だけだろう。

だから〜、と高尾に説明をしてあげる一哉に珍しいなと感心しながら絵本に目を落とす。何故この絵本の一ページ目が私達なのか。そう思いながら次のページに手をかける。恐る恐るページをめくっていくと私達が今まで行った教室とそこで起きた出来事が全て記されていた。そこはかとない不気味さに思わずページをめくる手が止まる。私が毒のせいで倒れて体育館で寝ていた時のことまで書かれていて、まだページは余っている。つまり、次のページはこの教室で起きることが書かれているかもしれないということ。

「…捲るのやだなあ、これ」
「まあ順当に行けばこの教室で起きることが書かれてるってことっすもんね」
「代わりに捲ってよ」
「俺っすか?いやいや、ここは原さんでしょ」
「は?なんで俺なわけ?お前がやれよ一年」
「待って当たり強すぎて笑う」
「うるせえぞてめぇら。朝倉もうだうだ言ってないでさっさと捲れ」
「…はいはいりょーかいしましたあー」

何となくページを捲るのを躊躇ってため息をつく。隣にいた高尾がケラケラ笑いながら開かれたページを指でなぞる。本を高尾に向かって差し出せば受け取った本を、高尾の正面にいた一哉に手渡す。何に不貞腐れてるのか知らないけれど機嫌の悪い一哉が本を押し返す。そんな一哉を見て更に声を上げて笑う高尾のメンタルはやっぱり化け物なんじゃないだろうか。ぼけっとしながら二人のやり取りを眺めているとニッコリと笑った宮地さんが本を二人の手から取り上げて私の手元へ戻す。なんで私が、と思いつつも適当に返事をして次のページに手をかけた。

ページを捲ってみれば予想通り描かれていたのは私達がこの図書館に入るシーン。だが、そこから先は真っ白なページのままで何一つ描かれていない。これから描かれるのか、それとも私達がここで全滅するという意味なのか…とそこまで考えを巡らせて頭を振る。少しだけこの絵本からこの先の出来事を読み取れるかもしれないと期待をしていたのだが、やはりそう簡単にはいかない。この絵本を見つけたからなんだと言うのだ、と皆が打つ手をなくして頭を抱えたくなったその時だった。ガタガタと音を立てて揺れ始めた本棚が勢いよく倒れ、そこから出てきたのはナイフを片手に持ったゾンビ。

「うげー…これ、どうします?」
「どうするったって…倒すしかないでしょ」
「倒すのはいいけどさっきの二の舞は勘弁してね、葉月」
「はいはい、失礼しましたー」

やっぱり、と言わんばかりの顔でこちらを見る高尾に当然でしょう、と返事をすればケラケラと笑いながらゾンビから距離を取っていた。いつでも反撃できるようにと構えていれば後ろから腕を引かれて、健太郎に抱えられる。また前線で戦って怪我でもされたら堪らないとでも言わんばかりに私を後ろに下げようとする健太郎に思わずため息が零れた。守られだけって言うのは何か嫌だし、今更危ないから下がってなよなんて女の子扱いされるのも気味が悪い。何となく居心地が悪くて眉間に皺を寄せていれば高尾がそれを見てケラケラと笑う。おいコラ、指さして笑ってんじゃねえ。

「上手いこと誘導して一匹ずつ仕留められないかな〜。まとめて相手すんの結構めんどいし」
「あ、じゃあ俺がやりますよ!」
「高尾、」
「だーいじょうぶだって!やばくなったらちゃーんと逃げるからさ!つーか、何?真ちゃん心配してくれてるの?」
「してないのだよ。さっさと行け」
「ひっでー!」

一歩ずつ私達に詰め寄ってくるゾンビ達を見て呟いた一哉に高尾が手を挙げる。そんな高尾を心配するかのように視線を向ける秀徳の面々に高尾がヘラリと笑っていつものように茶化す。その途端に全員少し安心したように表情を緩めて、緑間に至っては誰もが見てわかるくらい嫌そうに顔を歪めていた。ほんとにコイツらは仲が良いのだろうか。


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