普通に好きだよ

体育館に戻ってくるとお出迎えしてくれたのは例の害悪女子。「大丈夫ですか!?怪我とかしてませんか!?」と体育館に戻ってきた私達に真っ先に走ってきた。まあ、ほぼ全員シカトだったんだけど原だけが「何何〜?心配してくれてんの〜?」ってウザ絡みしてたから害悪女子の対応は原に任せて体育館の隅っこに移動する。

花宮は原から赤いガラス玉を受け取って赤司達の方に向かって行った。それを座ってぼんやり見ていた私の視界に入ってきたのはドM疑惑が浮上してる秀徳の高尾だった。何が楽しいのか分かんないけどケラケラ笑いながら「お疲れ様でっす!」と言って私の隣に座る。お前秀徳の所にいなくていいわけ?

「何しに来たの?」
「理由がないと来ちゃダメっすか?」
「いや別に秀徳の金髪の人がすっごいこっち見てるから」
「ぶほぉ!宮地さんめっちゃ睨んでる!」
「やっぱりお前ドMだな…」
「まって違うから!その目やめてー!」
「冗談だよ」
「いやいや、目マジでしたよ?」
「じゃあ冗談じゃないかも」
「適当っすか!ぶはっ!」
「うるせえ…」
「相変わらず口悪いっすね〜」
「ほっとけ」

高尾と私のポンポン続く会話に原やザキも段々乗っかってきて、面白がった古橋も入ってきて皆でくだらない話をする。高尾が霧崎と仲良くなってることに驚いているのか何なのか知らないけど驚いたような表情でこっちを見る他校のメンバーはすごく面白かった。

確かにバスケしている時はラフプレーしまくってるスポーツマンシップなんてクソくらえ、みたいな連中だけど普段は普通の高校生だと思うんだよね。私達。まあ、普通の人より考え方とか言動は斜め上かも知れないけど恋愛ごとではしゃいだり、誰かの誕生日にドッキリしたりしてるんだよ?こう見えても。

「あの珍しいものを見るような目、ムカつくよね〜」
「珍獣を見てる様な目だな」
「珍獣って…ぶはっ!霧崎の人達はパンダか何かっすか!」
「パンダはねえだろ…もっと悪そうな動物いないの」
「悪そうな動物ってなんだ…?」
「ライ○ンキ○グだとハイエナが悪役だな」
「ハイエナって珍しくないじゃん」
「古橋さんラ○オン○ング見るんすか?」
「こいつジ○リとかディ○ニーみたいなド定番ばっか見たがるんだよ」
「山崎さんと原さんはジャ○プ好きそうっすよね!」
「高尾もジ○ンプ好きなの?」
「好きっすよーBLE○CHとかいいっすよね」
「お前まじか、最高だな」
「あざーっす!」
「葉月もジャ○プ好きだよね」
「うん。普通に好きだよ」
「なんか霧崎って面白い人しかいないんすね」
「…面白いか?」
「面白いのはザキの顔でしょ」
「前髪野郎に言われたくねえっつーの!」
「前髪野郎って!ぎゃはは!」

他校のメンバーはあんまりギャーギャー騒いでいないって言うのもあって霧崎+高尾の騒ぐ声が体育館に響き渡る。花宮がうるせえ、って目で見てるけど正直騒いでるの私じゃないから知ーらない。原とザキと高尾に言って、あと古橋。瀬戸と私は無罪です。

花宮からの視線を無視して床に寝転がる瀬戸の髪の毛で遊んでいると再度赤司から声がかかる。なんでも、もう一度探索に行くらしい。と言ってもさっきウチが行って何も無かったからなあ…。あ、でもゾンビ倒したことで何かが変わったりしてるかも。と思ったら赤司達も同じことを考えていたようで、もう一度探索に行く理由はそれだった。

「次の探索は桐皇にお願いします。探索に加えて、このガラス玉の使い道も調べてきて下さい」
「あ、桃井は此処で待機な〜」
「わ、私も行きます…っ!」
「ゾンビと鉢合わせたら自分動かれへんやろ」
「でも…っ!」
「なにブサイクな顔してんだよ。黙って待ってろっつーの」
「ブサイクって何よ!心配してあげたのに!」
「はいはい、二人共そこまでにせえ。大丈夫やから、桃井は大人しく待っとき」
「…はい」

今吉さんからの指示に落ち込む桃井。優しく言ってるけど実際の所は足でまといは大人しく待ってろって意味だよね。この状況できゃーこわーいとか言ってやがったら手が出そうだけど。まあだからと言って使えないくせに私も行きますって言うことが賞賛できるかって言われればそれはまた別の話なんだけどさ。

にしても赤いガラス玉の使い道がほんとに謎すぎる。ゲームでありがちな展開で考えたらどこかの扉を開ける為のアイテム、もしくはここから脱出する為に必要なアイテム、もしくはあのガラス玉を特定の人が持つことによって何らかの効果が発揮される、辺りが考えられる。ゾンビを倒したことで取得できたってことは、これからもゾンビを倒さないと手に入らないアイテムが存在するってこと?それとも今回だけは特別だった?だとしたらあのガラス玉の使い道を早いところ明確にしないとこれから先、進展しないんじゃない?もはや考えられる可能性、片っ端から試すとか…。

「何百面相してんだよ」
「いだっ」
「すげえ顔してたぞ」
「どんな顔よ…」
「ブサイクな顔」
「おい」
「で?何考えてたんだよ」
「んー…ガラス玉のこと」
「あぁ、あれか」
「レベルアップの素材とかだったらいいのにね」
「誰のレベルアップすんだよ」
「私?」
「これ以上レベルアップする所なんてねえだろ」
「え?もう既にレベルMAXってこと?やだ照れる」
「あ?レベルMAXはMAXでも上限が底辺だったら底辺だろ」
「辛すぎる」

いつの間にか戻ってきてた花宮が隣に座ってて頭をチョップされた。うっ…つむじにクリーンヒット…痛かった…。気づいたら高尾は秀徳の場所に戻ってて、桐皇のメンバーは探索に出たようで桃井が深刻そうな表情で座ってる。その隣で誠凛のカントクと害悪女子が声をかけていた。うげ、あの中には死んでも入りたくない。

隣に座る花宮とはたまに会話はするけれど基本的には沈黙が続く。でもその沈黙は決して不快なものではなくて、むしろ心地いいくらいだから不思議だ。たまに口を開いたと思えば貶してくる様な奴と話して気分が落ち着くなんて私も大概おかしいと思う。

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