「で、花宮と葉月ちゃんは何か思いついとるん?」
「「は?」」
「後輩二人が厳しすぎてワシ悲しいわあ」
「私は今吉サンの後輩になった記憶はありません」
「相変わらず手厳しいなあ、葉月ちゃん。花宮には優しいのに、ワシには冷たいもんなあ」
「今吉サンと比べたら大体みんな優しくされてるんじゃないんですか」
「扱い雑なのは誠凛と今吉サンだけですよ。喜んでください」
「ほんま可愛い後輩達やなあ」
「……今吉サンこそ、何かわかってるんじゃないんですか」
「んー?多分葉月ちゃん達とおんなじことやと思うで?」

まこちゃんと一緒にガラス玉を返しに赤司と今吉サンがいる場所に行くと今吉サンが声をかけてきた。思わずまこちゃんとハモって返事を返してしまった。まこちゃんに聞くなら分かるけどなんで私に聞くわけ。何を言ってものらりくらりと交わされて、どれだけ冷たく対応しても可愛いと笑う今吉サンはほんとに妖怪かなんかだと思う。眼鏡の奥の閉じられた目の更に奥の奥。頭の中、っていうか心の奥底で色んなことを弾き出して考えてることは分かるんだけど、如何せん怖いものは怖いのだ。

「というか、私が思いつくような事なら赤司クンとか今吉サンなら余裕で思いつく事ですよね」
「ワシらも人間やし、思いつかんことくらいあるんやけどな」
「…へえ。じゃ、私はこれで」
「待ってください」
「…………何?」
「朝倉さんの目線でいいです。何か気になったことや気づいたことがあれば教えてください」
「なんで私に聞くの?」
「朝倉さんは観察眼や思考力、判断力に長けた人物だと思っています。優れた人から意見を貰いたいと思うのはいけないことですか?」
「……はあ。せいぜい根拠も何もない憶測だけの私の意見に引っ掻き回されないようにしてよ」
「ありがとうございます」

今吉サンと違った意味で恐ろしいなコイツ。カリスマ性に富んだ人物だとは思っていたけど実際に会話するとそれが良くわかる。自分が優れた人物だとは思わないけれど褒められて悪い気はしないし、手がかりを全て失って振り出しに戻ったこの状況下では試せるものは片っ端から試して行かないといつまでもここで足止めを食らうことになる。

そして、赤司の中でもいくつかの可能性は浮かんでいるはず。それを口に出さず、他人の意見を聞いた上で自分の意見と照らし合わせる。合致している部分とそう出ない部分を繋げて、削って、繋げて。今とるべき最善の策を見つけ出そうとしている。他人の使い方が上手い上に、相手に利用していることを悟らせない。私よりずっと賢い人に優れた人、とか言われるのも複雑だ。

「一つ目、彼女に何らかの役割がある

二つ目、彼女以外の人に何らかの役割がある

三つ目、ガラス玉にまだ他の役割がある

そして、四つ目。あんまり大声で言いたくないんだけど、あの女がこちら側ではないということ」

「こちら側じゃない…?」
「彼女は誠凛の生徒じゃなくて、私達が見たゾンビ達と同じ生き物かもしれないってことです。ま、あくまで推測ですけど」
「…なぜそう思ったんですか」
「一人だけ違う場所で目覚めたこと。彼女の倒れていた場所にアイテムがあったこと。彼女がガラス玉に弾かれたこと。そして、誠凛の人達全員が彼女を学校で見たことがないということ、かな」
「なるほど。一理ありますが、断定はできませんね…」
「断定できないから危険なのよ。疑ってるって視線は向けられないけれど適度に見張ってないと何をするかわからない。あの女と仲良くなってしまってる誠凛と桐皇マネは要注意だね。いつ利用されてもおかしくない」

私がずっと思っていたこと。それは、彼女が本当にこちら側なのか、だ。彼女にはおかしな点が多すぎる。でも彼女が仮にあちら側だったとしたら何故ここにいることが出来ているのか。この大人数でこれだけ話し声が響いているにも関わらず外からこの扉を叩く人が現れない。それはつまりここが安全エリアである可能性が高いということ。

安全エリアだとしたらゾンビ達と同じ部類である彼女はここに入ることが出来ない。それに、彼女がいた場所にアイテムがあった、というのはゲームではありきたりな展開の一つだ。敵が出てきた場所にはドロップアイテムが落ちていることがある、というもの。最初に拾った紙が彼女からのドロップアイテムだとしたら。一度あの女があちら側だと思ったらそうとしか思えなくなるのが人間だ。

どう頑張ってもあの女を悪役にしようと粗探しを始める。今必要なのは粗探しじゃなく本質を見極めて今何をするべきなのかを考えること。ガラス玉の使い道は?他に考えられる可能性は?自分にもなにか特別な役割があるのかもしれない。他にも特別な役割がある人がいるかもしれない。まだまだ考えなきゃならないことは山積みのようだ。

2017/11/30 執筆


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