あの日、花宮がなまえにキスをしたあの日から会うことは疎か連絡すら取っていないこの状況になまえは頭を抱えていた。あの時の花宮の表情が頭から離れず、気がつけば指で唇を触ってしまっているのだ。花宮を恋愛対象として見たことはなかったが、意識せざるを得なくなってしまったが為に頭をよぎるのはいつでも花宮だった。

「恋だね」
「は…?」
「だから、恋」
「魚の?」
「れ・ん・あ・い!」
「ま、まさかあ…」

大学での昼休み。友人と学食に来ていたなまえは友人の言葉に頬を引き攣らせた。確かに意識はしているかもしれないが、自分が花宮に恋なんてありえないと首を横に振る。怪しい、とジト目でなまえを見つめる友人から目をそらして一口、また一口と食べ進める。そんな時、滅多に鳴らないスマホがメッセージの受信音を立てた。もちろん相手はあの男。

「明日…?」
「何?お誘いでも来たの?」
「う、うん…」
「へえ、よかったじゃん」
「よかったの、かなあ…?」
「何で?この際一発ヤッてもらえば?」
「止めて」

メッセージに記されていたのは明日の夜飲みに行かないかというお誘いの言葉。隣で訳の分からないことをほざく友人に冷めた目を向けて了承の返事をする。


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