あっという間に夏休みは終わり、学校が始まった。宿題は最初の1週間で終わらせたから何の問題も無かったし、授業も変わらずついていけている。クラスの人とは相変わらずで、全く関わりを持っていない。今までと何も変わりはない、のだが二つほど大きく変わったことがある。

「えっと…入学式の時からみょうじさんのことが気になってて…」

「前からみょうじさんのこと可愛いと思ってたんだ」

「俺と付き合ってくれませんか」

みたいな、テンプレの言葉と共に告げられる言葉。そう、告白だ。変わったことの一つ目は名前も知らなければ顔も初めて見るような人達から告白されら事が増えた。勿論、私の答えは一択。どんな話を聞かされても「無理」の一言でバッサリ切り捨てて帰ってきている。この話をあの2人にしたら腹を抱えて笑ってた。

「あ、また来てる」

そして、告白と同時にもう一つ増えたこと。それは、女子生徒からの嫌がらせだ。「死ね」「ブス」「学校来んな」みたいなテンプレの言葉が書かれた紙が下駄箱に始まり、机の中、個人ロッカーなどの私が使う場所に入っているのだ。

最初はよくやるなあと思っていたのだが、段々数は増えるけど暴言のレパートリーは増えない状況になってからは紙を全部持って帰って家で種類分けして遊んでいる。断トツで多いのは「ブス」と「死ね」と「ビッチ」だ。

「今日は全部で23枚でした。ブスが8枚と死ねが9枚でワンツーフィニッシュだ」
「おおよそ嫌がらせを受けてる奴のリアクションではねえな」
「なまえちゃんが逞しすぎて俺達出番ないじゃん」
「んー?そろそろこの証拠持って警察と教育委員会に乗り込むつもりだから2人の出番はないよ」
「ほんとに逞しいな」

いつものカフェで2人の前に今日もらった熱烈な短文ラブレターを広げて見せれば複雑な顔をしていた。全くメンタルに影響はないし、なんならもう少し面白くならないかな、とまで思っているからそんなに心配しなくてもいいのに。

そろそろ枚数も膨大になってきたし、学校で引っ掛けられまくってる足にはいい感じに痣が出来てきてる。次の土曜日にでも警察と教育委員会に乗り込もうか、と漏らせば2人揃って苦笑いをしていた。忘れてるかもしれないけど、私は見た目高校生の中身20歳オーバーだからね。

「この紙は百歩譲っていいとしても、足の痣はお兄ちゃん許せないなあ」
「これも重要な証拠なのです。許して、お兄ちゃん」
「…可愛いから許す」
「絆されんな、アホ」
「えー、松田さんは絆されてくれないの?」

不機嫌な顔で紙をつまみながら話す萩原さんに、顔の前で両手を組んで首を傾げながらお兄ちゃんと呼べば「くっ…!」なんて言いながらあっさり許しちゃう萩原さんの頭を松田さんが叩く。残念ながら松田さんは絆されてくれる気はないらしい。

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