ボーダー本部には誰もが知っている暗黙の了解があった。



「諏訪さん、諏訪さん」
「どうした?」
「ふふ、なんでもなーい」



B級ソロの湊川梓と諏訪隊隊長の諏訪洸太郎が付き合っているということ。


そして、



「諏訪さん、ちゅー」
「ん、」
「ん…んっ」



湊川梓がキス魔であるという事だった。



「梓ってキス魔だよな」
「はぁ?いきなりなによ」
「ことある事に諏訪さんに迫ってんじゃん」
「好きなんだからキスなんて普通じゃん?」
「だあー!そうじゃなくて!」
「諦めろ、槍バカ。これは無理だ」



いつも通りラウンジで話す梓、出水、米屋の三人。不意に気になった米屋が梓に質問をするものの何がおかしいのか全く理解の出来ていない梓から返ってくる答えは米屋と出水の求めるものではなかった。



「あ、諏訪さんだ」
「梓、諏訪さん来たぞ」
「ほんと!?」



梓の後ろからこちらに向かって歩いてくる諏訪を見つけた二人が梓にそれを教えるとたちまち目を輝かせて後ろを振り返る。



「梓、帰んぞ」
「諏訪さんっ!」
「あっ、ぶねぇな…」
「うふふー」
「ったく、ほら行くぞ」



待っていました、と言わんばかりに諏訪に抱きつく梓。それを当然のように受け止めて何事も無かったかのように梓の手を握って、反対の手で梓の荷物を持つ諏訪。



「諏訪さん、んー」
「ん、」
「ふふ、もっかい」
「はいはい」



ラウンジの入口でそんなやりとりをする梓と諏訪の姿に全ボーダー隊員が生暖かい目を向けた。


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