ヒーローは嫌いだ。ヒーローは本当に助けてほしい時に助けてくれないから。



「死ねェええ!」

こちらに向かって走ってくる男が私に手を振り上げる。鋭利な刃物に変わった男の手が私の体を切りつける。全身を襲う痛みと熱に口から声にならない声が漏れる。目を閉じる直前に見えたのは目を見開く通行人の姿。耳を劈くような悲鳴が聞こえる。暗闇に沈む意識の中で誰かが私を抱き上げたような気がした。



「…殺して」

幼い私が瞳に涙を浮かべながらオールマイトを睨みつける。そんな私にそんなことを言ってはいけないよと彼が言う。もう一度、幼い私が殺してよと言う。彼は困ったような顔で幼い私の頭を撫でた。

No.1ヒーローが聞いて呆れる。目の前の幼い子供すら助けられないくせに、何がプロヒーローだ。人を助けるのが仕事なら、助けてよ。なんで、なんで誰も助けてくれないの。なんでみんな、わたしにせをむけるの。ねえ、どうして。

「たすけて、」

幼い私の目から零れた涙が頬を伝って、落ちる。誰もいない、この場所でその涙を拭ってくれる人はいなかった。ヒーローは嫌いだ。ヒーローはいつだって私を助けてなんてくれないのだから。


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