飲み物を買いに海の家まで来た。そこまでは何もなかった、のだが飲み物を買って皆の元に戻ろうと足を向けた時だった。

「ねえねえ、一人?」

お決まり、と言わんばかりのセリフで声をかけてきたのは如何にも、な感じの男の人二人。こういうのは相手にするだけ無駄だとシカトを決め込もうとしたけれど、腕を掴まれてはそれも叶わない。

「離してください」
「めっちゃ可愛い水着だね」
「顔も可愛いし、俺結構好みかも」

どれだけ素っ気なくしてもニヤニヤと笑う男達にどうしようか、と思っていると聞き慣れた声が耳に入る。

「僕の彼女に何か用ですか?」
「わっ、紬さん?」
「ごめんね。待たせちゃったかな」
「ううん。大丈夫」
「じゃあ、僕達はこれで。失礼しますね」
「は?あ、おいちょっと待てよ!」

声と同時に肩を抱かれてぐいっと引き寄せられる。隣に立つ紬さんに合わせるように話をすれば、紬さんはそのまま男達に背を向けて歩き始める。男達の引き止める声がしたけど構うこと無く歩けばさすがの男達も追いかけては来なかったようで、そのまま暫く歩き続ける。

「もう、大丈夫かな」
「助けてくれて、ありがと。紬さん」
「僕こそ、助ける為とは言え…肩組んじゃって、ごめんね」
「ううん。意外と紬さんの体、しっかりしててびっくりした」
「あ、はは…いつも隣に丞がいるからね」
「なんか大人の男って感じでちょっとキュンとしちゃった」
「ええっ!?」
「あはは!顔赤いよ」
「なまえちゃん…」

男達から十分に距離をとってからするりと体が離れる。向き合ってお礼を言えば恥ずかしそうに頬をかきながら謝られる。細身に見えるのに意外としっかりしていた体に驚けば紬さんも細身に見られている自覚はあったようで苦笑いをしていた。そんな紬さんに悪戯に笑って見せれば大げさに驚いた後、頬を赤くしていた。もちろんその後、「からかわないでよ!」と怒られた。

「それより…なまえちゃん」
「はい?」
「一人で行動するのはあんまり感心しないな」
「だってすぐそこだったし…」
「今回は声をかけられただけで済んだけど、何かあったらどうするの」
「うぐ…ごめんなさい…」
「次からはちゃんと誰か連れていくこと!分かった?」
「はぁい」

照れる紬さんにクスクス笑っていれば急に真剣な顔になった紬さんが口を開く。確かに、一人でふらふら買い物に来た結果こうして声をかけられてしまっている以上私に反論の余地はない。優しく言われている分、言葉の一つ一つがグサグサと刺さる。

「分かったなら良し!さ、皆待ってるから行こう」
「うん。また何か買いに行く時は紬さん、一緒に来てくれる?」
「えっ。僕でいいの?」
「紬さんがいいの。ダメ?」
「ううん、ダメなんかじゃないよ」

シュンとする私の頭をゆるりと撫でて手を取って歩き出した紬さんに声をかける。万里や十座じゃガラが悪いし、咲也や太一じゃ弟に見えかねないし、シトロンは綴と至さんの翻訳なしじゃ何を言っているのかサッパリだ。正直なところ、紬さんが一番男避けに適している。私の言葉にくしゃりと笑った紬さんに私も笑い返して皆の元へと足を進めた。

お叱りと紅潮と最適解


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