酔っぱらい自慢


※成人済み※未来捏造
※皆プロヒーローになってる
※夢主ちょっとしかでない※ほぼ派閥


〜〜〜


「で?爆豪クン?あの熱愛報道はどういうことなのかな?」


プロヒーロー御用達の居酒屋で飲んでいた爆豪は上鳴からの質問に一切答える素振りを見せずに酒を煽った。空になったジョッキをテーブルの隅に押しやって店員に新たに酒を注文する。


「…つーか、気づいてんだろお前ら」
「やっぱあれ名字か」
「さすが個性"変装"だな。気づいてんの元1Aの奴らくらいだろ」
「つーか、爆豪があんだけ密着して歩かせるの許可してる時点で名字だよな」


爆豪がつい最近すっぱ抜かれた熱愛報道についてニヤニヤと笑う上鳴だったが、その表情が第三者が思うそれとは異なることに気付かない爆豪ではなかった。

何杯目の酒をつまみと一緒に流し込みながら呆れたように爆豪が口を開けば、切島が苦笑いで返す。瀬呂と上鳴もやっぱりな、と言った様子で笑って返す。


「そういえば前に仕事で一緒になって遅くなった時もこの顔作ってたな」
「俺もこの顔だったぜ。何でも夜誰かと歩く時いっつもこの顔なんだと」

「毎回新しい顔考えるのも大変だからね」

「なっ、名字!?」
「いつから聞いて…つーか何でここにいんの!?」


興味なさげに酒を煽る爆豪そっちのけで盛り上がる瀬呂、切島、上鳴。その背後からかけられた声に三人の肩が跳ねた。声の主は今の今まで話題に出ていた名字本人で、別に後ろめたい話をしていた訳じゃないのにも関わらず何故か焦った様子の三人を見て爆豪は鼻を鳴らした。


「勝己が来いっていうから寄ったの。あっちに皆もいるよ」
「皆?」
「あー、そういえば今日女子会って芦戸がSNSに載せてたな」


名前は驚く三人のテーブルから枝豆を一つ摘んで口に運びながら扉の外を指さした。プロヒーロー御用達とあって完全個室の会員制であるこの居酒屋はこういった偶然の出会いはよくある事だった。


「そーゆーこと。で、なに?勝己」
「終わったら連絡しろ」
「ん、りょーかい」


納得した様子の三人にへらりと笑った名前は思い出したかのように本来の目的であった爆豪に声をかける。爆豪はチラリと名前に視線を向けたあと素っ気なく一言だけ告げる。それに嬉しそうに笑った名前は「また後でね」と言って爆豪達の部屋から出ていった。


「えっ…まさか爆豪、謀った…?」
「ハッ、当然だろ」


全く驚いていない爆豪にまさかと思い、切島が恐る恐る尋ねれば勝ち誇ったような顔で爆豪が笑う。名前が自分の話をしている時に丁度この部屋に来るように爆豪が仕組んでいたという訳だ。でも何でだ?と切島が問おうとすると呆れたように笑いながら瀬呂が口を開いた。


「なるほどなー。熱愛報道に書かれてたことに言及しなかったのは事実だからってことか」
「え、なにどゆこと?」
「だから、爆豪と名字が付き合っててお泊まりデートって書いてあったのも嘘じゃないからさっき上鳴が聞いた時に何も言わなかったんだろ。それに態々見せつけるみたいに名字呼ぶし」
「仲が良いとは思ってたけどお前ら付き合ってたのかよ!!!」


瀬呂の言葉に首を傾げていた上鳴だったが納得したのと同時に声を荒らげてジョッキに入っていた残りの酒を一気に煽った。付き合っていることを教えてくれなかった事、気づいたら友人がリア充の仲間入りをしていた事、色んな事が不満なのか上鳴は酒を煽りながらぶうぶうと文句を垂れていた。

切島は瀬呂の言葉で納得が言ったようで、瀬呂と二人で顔を見合わせて笑う。来た時からハイペースで飲み続けていた爆豪は珍しく酔っているようで文句を言いながら纒わり付く上鳴に吠えることなく終始勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。


「酔ってるからこその自慢って訳か」
「酔ってなかったら絶対やらねえだろ」


爆豪が自ら付き合っていることをバラすような行動に出たのも酔っていたからだ。いつもの爆豪なら自分達がいる所に名前を呼ぶことなんてしなかっただろう。怒られないことをいい事に調子に乗った上鳴に段々不機嫌になっていく爆豪の機嫌を取るべく、二人は重い腰を上げた。


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