顔が赤いのは夕日のせい


「切島…?」
「名字…か?」
「びっくりしたぁ!誰かと思っちゃったよ!見違えたね!」
「名字も可愛くなったな!」
「そ、そう…?ありがと…」


学校からの帰り道を歩いていた名前は向かいから歩いてきた赤い髪の男を見て足を止めた。恐る恐る声をかければ男も同じように立ち止まり名前を見て目を丸くした。その男は、名前が中学時代に一番仲の良かった男だった。

にこりと眩しい笑顔を見せる切島に名前は表情を和らげた。中学時代は比較的静かなタイプだった切島は雄英進学を機に大きく変わったようだった。それでも真っ直ぐな瞳や優しい性格は変わっていないようで、笑う切島を見て名前もふにゃりと笑った。


「どう?雄英」
「楽しいぜ!まあ、大変っちゃ大変だけどな」
「そっかぁ…。でも中学の時より、いきいきしてるよ」
「…?そうか?」
「うん。中学の時もかっこよかったけど、今はもっとかっこいいよ」
「お、おう!あ、ありがとな!」
「ふふ。照れてる?」
「なっ…!照れてねえよ!」


家の方向が同じ二人が並んで歩く。さり気なく車道側を歩く切島に名前が小さく笑って口を開いた。出会い頭に照れさせられた名前が仕返しと言わんばかりに笑えば切島が少し頬を赤く染めて戸惑うように視線を泳がせる。


「ねえ、切島」
「ん?」
「帰り、さ。その…いつも、この時間?」
「まあ大体今くらいだと思うけど…どうした?」


中学時代、密かに切島に恋をしていた名前が恐る恐る口を開く。その歯切れの悪さに切島が首を傾げて名前を見つめる。


「また、こうやって一緒に帰らない?あ、いや、切島が良ければ…なんだけど…その、無理だったら全然!全然いいから!」
「いや!全然!無理とかねえよ!お、俺で良いなら一緒に帰ろうぜ!」


切島の顔を見ることが出来ず、俯き気味に早口に話す名前の耳が赤く染まっていることに気づいた切島もつられるように顔が赤くなる。

小さな声で「あ、りがと…」と言う名前は未だに顔を俯かせており、切島は「名字がこっち見てなくてほんとによかった…」と心の中で安堵のため息をついた。


.
ALICE+