貴方の手で暖めて

「さむーい!」
「わ、雪降っとる!」
「嘘ぉ!」

共有スペースに響き渡る女子のきゃあきゃあとはしゃぐ声。決してそれは煩わしいものではなく、俺からすれば眼福ならず耳福だ。ん?そんな単語あったっけ?ま、いっか。窓に張り付いて雪だ雪だとはしゃぐ女子につられて皆が窓際に立って空を見上げる。ふわりふわりと落ちてくる白い雪が窓に当たってしゅわりと消える。

「雪、綺麗だねぇ」
「そうだな」
「轟くんの氷も上手く削ったら雪みたいになるかなあ?」
「やったことねえから分かんねえな…。今度やってみるか」
「うん!雪だるま作ろう!雪だるま!」
「あぁ、作るか」

隣で積もったら雪合戦しよーぜ!なんて騒ぐ切島達に乗っかりたいところだが、今は俺の隣で静かにいちゃつく轟と名字を観察したい。窓の外を眺めながら呟く名字に轟が返事をする。いつもの声より数段柔らかい声にどっから出してんだその声!とツッコミたい。雪だるまを作ろうとはしゃぐ名字は正直可愛い。ぱあっと明るくなった表情につられて俺の頬まで緩む。まあ、轟の表情の方が緩んでるんだけどな。

「っくしゅ、」
「寒いか?」
「ちょっとだけ」
「ほら」
「わ、なになに!?」
「寒いんだろ」
「轟くんの手、あったかいねえ」

轟が緩んだ顔で名字の頭を撫でていると、小さく肩を震わせた名字が可愛らしいくしゃみをする。うん、くしゃみまで可愛い。けしからん。そんな名字に轟がさっと右手を出して、その頬に触れる。名字もその手に触れてあったか〜いなんて頬を緩めている。えっ、なに、超羨ましいんだけど。半冷半燃ずるくない?え?俺もなんか女子に合法的に触りたいんだけど?

「でも、轟くんのこと使ってるみたいでちょっと嫌だなあ」
「俺は名前の役に立てて嬉しいけどな」
「ふふ。かっこいいね」
「そうか?」
「うん。ありがと、轟くん」
「もういいのか?」
「また寒くなったら暖めて?」
「あぁ、分かった」

な ん な ん だ 。何だ、このバカップルみたいな会話は。これでコイツら付き合ってないんだぜ?信じられるか?ほら、皆もまた始まったよみたいな顔してるし。なーんで俺、こんなときに限って隣に立っちゃったかなあ。めっちゃ会話聞こえるし二人の表情もバッチリ確認できるし。つーか、コイツら俺らがいるって分かってんのかな。アウトオブ眼中だろ絶対。あーあーあー!俺も彼女欲しいなあ!

「上鳴、出てる出てる」
「うぇ!?まじ?どっから?」
「俺らがいるって分かってんのかなーくらいから」
「oh…」
「ま、気持ちは分からんでもないけどなー」

意図せずこぼれた俺のため息に苦笑いをしながら話しかけてきた瀬呂とそっとその場を離れてソファに座る。さっきとは別の意味でアイツらを見てはしゃぐ女子の声をBGMに俺はまたため息をついた。あー、やっぱり俺も可愛い彼女が欲しい!



上鳴視点でナチュラルにいちゃつく轟くんでした。轟くんのぽやぽや具合だときっとナチュラルにイチャつくだろうし、なまじ顔がイケメンだから大体何しても許されるって言うか。多分許すでしょ、皆。だってカイロ渡すみたいに自分の手を貸すとか絶対やるじゃん彼。しかも皆それをありがとうございます!って握るでしょ。知ってる私もだもん。夢主もぽやぽやにしたらマイナスイオンを放出してるようなカップルができあがりました。久しぶりにこういう夢主書いたので楽しかったです。素敵なお題ありがとうございました!

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