ハートのKは誰に微笑むか

閉じ込められたのは【トランプしないと出られない部屋】とか言うクソもくだらない部屋だった。全く意味がわからない上になぜこのメンバーなのかも極めて謎だ。というか、私がこのメンバーに混ざってトランプをする意味がわからない。負け戦確定なのに何故やらなければいけないんだ。

「…シュールだ」
「あ?」
「いや機嫌悪いのは分かるけどさあ…私に当たらないでよ…」

四人で小さな円になって座り、各自5枚ずつカードを持つ。山札を真ん中に置いて、カードを捨てて、引く。詰まるところ、ポーカーをやっているという訳だ。涼しい顔をする赤司と今吉さんに対して不満げに表情を歪める花宮。私はどちらかと言えば後者だが、正直勝てると思ってないし部屋から出る為ならわざわざ勝たなくてもいいと思っている。花宮は負けず嫌いだからそんな事は思ってないだろうけど。

「なんや名前ちゃん。全然楽しそうやないやん」
「楽しくないですよ、こんな負け戦。どうせ私が最下位だし」
「ご謙遜を。名字さんも強いでしょう?」
「赤司には負けるよ。まぁ、花宮には勝てたらいいなとは思ってるけどね」
「お前が俺に勝てるわけねえだろブス」
「冗談じゃん。もー機嫌悪すぎー」

順にカードを捨てては引き、捨てては引きを繰り返しながら会話をする。私を見てニヤニヤと笑う今吉さんの言葉に自然と眉間にシワが寄ってしまう。なんで私の考えてることを的確に当ててくるんだこの男。肩を竦めて鼻で笑えば赤司がふっと表情を緩めて私に笑いかける。なまじ顔が良いだけにドキッとする。ほんとにコイツ年下かよ、と思いながらも軽く返事をして二人の視線から逃げるように花宮に向かって笑う。やっぱり機嫌の悪い花宮はこちらをチラリとも見ずに吐き捨てた。

「皆で一斉に見せたらおもろくないやろ?一人ずつ見せてくんはどうや」
「そうですね。折角ですから楽しみましょうか」
「うーわー…やらしいなあ…」
「チッ。めんどくせえ事言いやがって」
「なんや花宮。不満そうやな」
「そんな事ないですよ。さっさと出してください」

全員がカードを交換し終えて、互いの顔を見る。ニヤリと意地悪そうに笑った今吉さんの提案に赤司が乗っかる。嫌だなあと思いながら花宮をチラリと見て、見なきゃ良かったと思った。完全に人一人殺した目だった。ほんとに今吉さんのこと嫌いなんだなあ。とぼんやり見ているとそんな花宮に今吉さんが絡んでいく。頼むから止めて欲しい。こうなった花宮の相手をするのはかなり骨が折れるし、正直面倒くさい。

「じゃ、私からね。JとQのフルハウス」
「4のフォーカード」
「うわ、負けた」
「ふはっ。当たり前だろ」

このまま放っておくと花宮の血管がやばいと思い、手持ちのカードを出す。私の役はJ2枚とQ3枚のフルハウス。まあまあ、いい方だろうと思っていたら間髪入れずに花宮がカードを出す。花宮の役は4のフォーカードで私よりも上。ああ、やっぱり勝てなかったと声をあげれば花宮は私を見て鼻で笑った。

「今吉さんは?」
「ストレートフラッシュや」
「マジかよ」
「うわーやだー」
「やだって何や、やだって」

私たち二人を見て意地悪そうに笑う今吉さんに視線を移して問えばカードが出される。今吉さんの役はクローバーの6.7.8.9.10で、ストレートフラッシュ。そりゃ自慢げな顔にもなるよなあと思わず苦笑いが零れる。花宮もげんなりした顔をしていた。ここまで来るともう怒りとかムカつきとかを通り越して気持ち悪い。

「赤司が勝つためにはアレしかない訳だけど」
「そうですね」
「まさか…?」
「そのまさかです。ロイヤルストレートフラッシュ」
「うっわ初めて見たー…」

今吉さんがストレートフラッシュということは必然的にクローバーよりスートの強いハート、ダイヤ、スペードでストレートフラッシュの役を完成させるかロイヤルストレートフラッシュに限られる。赤司の余裕の笑みにまさかなと思いながら恐る恐る聞けばちょっとだけ困ったように眉を下げてカードを出す。ハートの10.J.Q.K.Aの5枚。紛うことなきロイヤルストレートフラッシュだ。実際のゲームで見たのは初めてで思わず感嘆の声が漏れる。

「可愛くない奴やなあ」
「すみません」
「チッ。おい、さっさと出るぞ」
「あ、ちょっと花宮!」

楽しそうに会話する今吉さんと赤司を少し離れた所で見ていると舌打ちをして花宮が立ち上がる。足早に扉に向かう花宮を追いかければ、後ろから二人がついてくる気配。突然意味のわからない部屋に放り込まれて挙句、自分の嫌いな人と一緒にトランプをさせられるという状況に花宮はすっかりご立腹の様子で。まあ、私は少し楽しかったけど。



リクエストありがとうございます。この4人にトランプ…えっ、花宮絶対やらねえじゃん…と思いつつもじゃあ最近話題(?)のご都合部屋に入れてしまえと入れた結果こんな感じになりました。頭が良いと言えばポーカーだろ!みたいな安直な考えで始まったポーカー大会ですがまあ、見たまんまですね。赤司無双に拍車がかかっただけでした(笑)。このメンバーだとどうしても劣勢になっちゃう花宮が可愛くてふふふと笑ってました。楽しかったです。素敵なリクエストありがとうございました!

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