決して抱かれたわけではない

※上耳要素ありです



今日は待ちに待ったFES当日。ずっと好きだったバンドが出ると聞いていてもたってもいられずに響香と二人でチケット応募したのは記憶に新しい。いざ蓋を開けてみれば二人共当たっていて計4枚のチケットが手に入った。あれよあれよと言う間に上鳴と爆豪も一緒に来ることが決まり、四人でライブ会場にやってきた。

「やっばい…わくわくする…!」
「ね…!ほんとやばい…」

会場の熱気にワクワクしながら目を輝かせる響香に同意して私も首にかけたタオルを握りしめる。少しして始まったライブに会場の熱気は最高潮。もちろん私達のテンションも最高潮。けれどこういう野外FESだとどうしても周りの人達とぶつかったり足を踏まれたり、そういうのが当然のように起きてしまう。かく言う私もさっきからぶつかられるし足も踏まれてる。それでもアドレナリンが出まくっているせいか、それとも訓練で慣れているからなのか。全く痛くない。隣の爆豪はぶつかられたり足を踏まれる度に舌打ちしてるけど。

「あー!最っ高!めっちゃ楽しかったー!」
「つーか、耳郎どこ行った?」
「え、分かんない。上鳴と一緒にいたんじゃないの?」
「いや一緒だったけど…あ、いた」
「は、どこに…ってちょっと、!」
「てめえが行ってどうすんだよ。どうせ迷子になるんだから黙ってろ」

くるりと辺りを見渡したあと駆け出した上鳴の背中を追おうとした瞬間、爆豪に首根っこを掴まれて前に進めなくなる。バタバタと騒ぐ私の頭をパシリと叩いた爆豪に恨めしそうな目を向けると数秒こちらを見た後鼻で笑われた。何なんだこいつ、くっそムカつく!爆豪から目をそらして上鳴が向かった方向に目を向ける。

うっすらと青白くなった顔でしゃがみ込む響香を上鳴がしょうがないなあ、と言わんばかりの緩んだ顔で引き上げてそのまま抱き上げる。上鳴の背中を何度か叩いた後、その首に腕を回して響香がしがみつく。恐らく人の波に流されて前の方に行ってしまったのだろう。響香の身長じゃ確実に埋もれて呼吸ができなくなるのが容易に想像できる。それは私にも言えることで、4人中2人がその状態の為、今回もそれを懸念して後ろの方に下がったのだ。

「…ナチュラルにイチャついてますね爆豪さん」
「死ね」
「ヤキモチ?」
「何にだよ」
「私とイチャイチャしてもいいのよ?」
「するかクソが」
「何いちゃついてんの?お二人さん」
「…死ねアホ面」
「なんで!?ひどくね!?」

こちらに向かって歩いてくる上鳴の表情の緩み具合に内心ちょっぴり、ほんのちょっぴりイラッとしながら爆豪の腕をつつけば真顔で返事が来る。こいつ本当に死ねしかボキャないのかな。ふざけて爆豪の腕に絡みついてみればものすごい速さで振り払われた後、また頭を叩かれた。頭を抑えて痛みに耐えていればさっきとは別の意味でニヤニヤした上鳴が声をかけてくる。さっきより数倍凶悪そうな顔で上鳴の頭を叩いた爆豪に思わず笑ってしまった。

「大丈夫かーきょーかちゃーん」
「マジごめん。酔った…」
「そりゃそうだ。うちらの身長であれは厳しいもん」
「あー、気持ち悪い…」
「で?」
「…でって何?」
「上鳴に抱っこされて帰ってきたわけだけど抱かれた感想は?」
「その言い方止めて」
「え〜だって抱かれてたじゃん」
「抱かれてないからうるさい名前」
「顔赤いぞ響香ちゃん」
「うっさい」



上耳〜〜〜〜〜可愛いでちゅね〜〜〜〜って思わず叫んでしまったお題。お話の都合上夢主と爆豪くんにも出演していただきました。見る人によっては爆豪夢かもしれない……。そんな感じで、上耳でライブでした。素敵なお題ありがとうございました〜

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