大学の時によくない先輩に目付けられて無理やり連れて行かれそうになった雛。何とか逃げて泣きじゃくりながら走ってとにかく誰でもいいからって深夜にも関わらず片っ端から電話かけてたまたま繋がったのが白布だった。
「なんだよこんな夜中に」って嫌そうな声しながらもちゃんと電話に出てくれる白布だけど電話の向こうから聞こえてくるのは荒い呼吸の音と外の風の音で一瞬で違和感を覚える。「雛?お前今どこにいんの?」って聞いたら「けんじろ、けんじろぉ…っ、」ってぼろぼろ泣きじゃくりながら名前を呼ばれてガタガタッて立ち上がる。
「雛、今どこにいるか分かるか?」って通話をスピーカーモードにしてなるべくゆっくり、優しく声をかけながら財布と鍵をポケットに入れて上着を羽織って外に出る準備をする。「今から行くから、どこにいるか教えろ」って言えば「わかんない、もうやだぁ…っ、!」って雛が泣くから「近くに何がある?コンビニでも何でも、とにかく人がいるところに行って店の名前教えろ。な?できるだろ、大丈夫だから」って声をかけ続けてようやく近くにあったコンビニの店名が返ってくるからスニーカーに勢いよく足を突っ込んで走り出す。
店の前に着いたら真冬なのにコートも着ないで地べたに座り込んでる雛がいるから「ッ雛!!!」って思わず大きい声が出る。ハッとして顔を上げた雛が白布を見るなりぼろぼろ涙を流して「けんじろぉ、けんっ、じろ…!」って手を伸ばしてくるから反射的に抱き締めて冷たくなった体を暖めるようにゆっくり背中をさする。
それからすぐに自分のコートを脱いで雛に着せてもう一度抱き締めて背中を撫でれば腕の中でぐすぐす鼻を鳴らして泣いてるから落ち着くまでずっと抱き締めてあげる白布がいる。雛が白布に手を伸ばした時に腕に掴まれた跡があった事と、雛の服が異様に乱れている事と、異常な怯え方を見たら最悪の予感が頭をよぎってしまうけど、それを説明しろって雛に言うのも酷な気がしてしまって抱き締めて背中を撫でることしか出来ない。
「落ち着いたか?」って雛の顔を覗き込めば、きゅうっと唇を噛み締めたままだけどこくんって頷いてくれるから一安心。「一旦、帰るか。俺んちでもいいか?」って聞けば、またこくんって頷くから雛の手を引いて家に帰る。すぐにお風呂に入れてあげたかったけど、最悪のパターンだったとしたら風呂に入るよりも病院に行く方が先になる。
悩んで悩んで「…言いたくないかもしれねぇけど、何があったか教えてくれるか」って聞けば一瞬ぱちぱちと目を瞬かせた雛がじわじわ涙を浮かべながら一生懸命話をしてくれる。友人と行った飲み会でたまたま出会ってしまって一緒に飲みに行こうってしつこく付きまとわれて最終的に無理やり腕を掴んで連れ込まれそうになったから必死に抵抗して逃げてきたのだと泣きながら話す雛に白布がホッと息を吐く。
ぽろぽろ涙を流す雛をぎゅううっと抱き締めながら「良くは、ねぇけど…良かった…何か、された訳じゃねぇんだな」って心底安心したように息を吐く。「風呂、入って体あっためてこい」って雛を風呂に押し込んで部屋に戻ってふと気付いたら雛のスマホが鳴ってることに気が付く。
別に中を見るつもりでは無かったけど電話をかけて来てたのが二口だったからいつもの感覚で電話に出ちゃう。「は?何?今一緒にいんの?」って怪訝な声の二口に「あー、まあ色々あってな」って言えば「なんだそれ。てか雛は?」って二口が聞いてくるから「俺からは言えねえから、雛に直接聞いてくんね?」って言えばそれだけで何かあったって察してくれる。
「今一緒にいるんだよな?」「俺んちにいる」「俺も行っていい?何か買ってった方いいなら買ってくけど」「あー…じゃあアイツの着替えと何か温かいもん買ってきて」「温かいもん?ココアとか?」「そんな感じ」「へいへい着いたら連絡するわ」って電話を切ってちょっとしたら雛が戻ってくる。
「早くね?ちゃんと暖まったのかよ」って言いながらまだぽたぽた水が滴ってる髪の毛をタオルでわしわし拭いてあげる。「だって、なんか、さみしくて」って雛が言うけど一緒には入れないから「つってもなぁ…」ってなっちゃう。「二口、今から来るってよ」って言われて「二口?なんで?」ってきょとんと雛が首を傾げる。
「雛のスマホ、電話来てた」って雛のスマホを指させば「あ、わすれてた」ってスマホを覗いてから「……わぁ」って困った顔でスマホをいじり出す。「どうした?」って聞いたら「ちょっと、パニクってて、ほんとに片っ端から色んな人に電話かけてたみたい」って苦笑いしながら雛が履歴を見せてくれるんだけど、ほんとにランダムに色んな人に電話かけまくっててお陰で色んな人から折り返しやらメッセージやらが大量に届いてるから笑っちゃう。
「酔ってたことにしよう…みんなごめん…」ってしょんぼりしながら部屋の入口で立ったまま一人一人にちゃんとメッセージ送ってる雛の頭をぽんぽんって撫でて「こっち、座れば」って言えばちょこちょこ後ろを着いてきて隣にちょこんって座るからまた笑っちゃう。
2人で喋りながらゆっくりしてればチャイムが鳴って「お、来た」「誰?」「二口」「あ、そう言えば来るって言ってたね。え、何で?」「お前が心配だからだろ」「わたし?」って玄関開ける為に立ち上がった白布の後ろを雛が着いてくるからまた笑っちゃう。
玄関を開けて二口を招き入れれば雛を見るなり頭を勢い良くぐしゃぐしゃぐしゃ〜〜!!!って撫で回して「わっ、わぁ…っなに、なに!?」ってびっくりする雛をぎゅっと抱きしめる。目をまん丸にする雛に「ふたくち?」「お前が好きって言ってたの、買ってきた」「なあに?あ、これ…!」「前美味しいって言ってたろ」「うん、すき」って袋を渡して白布と3人で部屋の中に入る。
「あークソ寒ィ」「ごめんね、こんな夜中に」「いーって。お前のせいじゃねぇだろ」「でも、」「んじゃこれ、俺にもちょーだい」「それは全然…てか、買ってきたの二口じゃん…」「まあまあ」って頭をぽんぽん撫でられて3人で部屋に戻る。何があったのか聞かずに隣にいていつも通りにしていてくれる二口と、毎日勉強で大変なはずなのにすぐに駆けつけてくれてずっとそばにいてくれる白布にぽろ、って涙が出ちゃって「…ありがと…っ、」って言えばびっくりしたように2人とも目を見開いてから「ばーか」「泣き虫」って隣に座ってわざとどーん!ってぶつかってくるから3人で笑い合う。
お風呂に入ったのと温かい飲み物と2人の体温で眠くなっちゃった雛がこくん、こくんって船を漕ぎ出すから「眠いなら寝とけ」って二口が雛の頭を自分の肩の方に抱き寄せて、白布が雛の手からカップを取ってブランケットをかけてくれる。
「おやすみ」「ゆっくり休めよ」って2人に見守られながらくうくう寝息を立てる雛の目元が赤くなってるのを見て「…雛が自分から言うまで聞くつもりはねぇけど、なんかあったんだろ」って二口が言うから「…おー」ってYESともNOとも言えない返事をする白布がいるよ。
その後はすぐにいつも通りに2人であーでもないこーでもないって色んな話して雛をベッドに運んで自分たちは床に雑魚寝。朝方目を覚ました雛が寂しくて床で寝てる2人の間に挟まって2度寝するから「いやベッドで寝かせた意味」「わざわざ枕まで持ってきてら」って笑っちゃうね。