すれ違って、迷って、たどり着いて

ずっと西谷が好きだった雛。あちこち飛び歩いて好きなことしてる西谷の邪魔をしたくなくて「……私、ノヤのこと好きでいるの止めようと思ってるんだ」って大人になった2年ズと飲みに来てる時にぽろっと言うから皆びっくり。

「何でまた急にそんなこと言い出したんだよ」「喧嘩でもしたのか〜?」って苦笑いの縁下と木下に「昔はね、ノヤも私と同じ気持ちでいてくれたりするかなって思ったこともあったの。でも…ノヤの1番は、今も昔も私じゃないから」って泣きそうな顔で笑う雛に全員が否定出来ずに黙る。

「そもそもバレーとかノヤのやりたい事と同じ土俵で考えるなって話なんだけどね」ってあはは、って笑う雛の顔があまりにも寂しそうで何も言えない2年ズがいる。

「それでも、心のどこかで、ノヤにとっての一番になれたらいいなって…思ってたんだよね、わたし」って諦めたように笑った雛が「ごめんね!こんな話しちゃって!この間、会社の同期の子に告白されてさ。ノヤのこと諦められてなくても良いって言ってくれたから、付き合おうと思ってるの。だから、皆にはその報告!」って無理やり明るく笑うから、それはそれで皆びっくり。

「ぇっ、ハ…ッ!?」「おま、それを先に言えよ!?」「同期の…って、前に飯行ったって言ってた奴!?」「絶対雛のこと狙ってると思ったんだよアイツ…!」って皆が一斉にガダダッて椅子から立ち上がるから雛は目をまん丸にして「え…っ、えぇ…そ、そんな怖い顔、しなくても…」ってたじたじになっちゃう。

「皆にも、今度紹介させてね」って笑った雛はその日の夜には告白してきた同期の男の子にOKの返事をしちゃうから止める間もなくて、全員が慌てて西谷を呼び戻す。「雛が?」ってびっくりしたような、ショックを受けたような顔でぽかんとする西谷に「…このままで、本当にいいのか」って縁下が言えば諦めたように笑った西谷が「……アイツが、それで良いなら良いんじゃねぇの」って言うから全員頭を抱える。

2年ズは雛が西谷のことを好いているのも、西谷が雛のことを好いているのも、全部知ってるからお互い相手の事を思って引き下がった結果、どっちも幸せになってない状況にもどかしさしか無い。

「本当に良いんだな」って怖い顔する木下に「本当に、ってどういう意味だよ」って西谷が返せば「雛がその男と付き合うってことは、西谷は勿論、俺らとも頻繁には会えなくなる。仮にアイツが本当に幸せになったとしても、俺たちはそれを見れないんだぞ!」って珍しく木下が声を荒らげる。

「俺は!雛に幸せになって欲しいし、ずっと笑ってて欲しいって思ってる!でも、でもそれを!見届けられないのは嫌だ」って悔しそうな顔をするから「…俺も。雛が幸せだって、笑ってくれる場所はココがいい」って成田も言う。

そんな2人の姿に田中と縁下も「俺だって…!俺が潔子さんと付き合えたって言った時、雛が泣いて喜んでくれたんだよ。だから、俺もアイツが幸せだって、言う時には一緒にいてやりたい」「他の誰かに持ってかれるくらいなら、俺が雛に告白する。雛が幸せになるだけで良いなら、それでもいいよな?西谷」って言うから西谷の頭の中でぐるぐる色んな考えが巡る。

雛がどこの誰とも知らない男の隣で笑ってて、それをバレー部の皆は誰1人共有できない。雛が本当に幸せになっているのかを確かめる術はないし、悲しくて泣いていたとしても気付いてあげられない。もう、二度と、自分の隣で笑ってくれない。そう思ったら我慢出来るはずもなかった。

「……俺、ちょっと雛に会ってくる」って走り出した西谷に全員が一瞬呆気に取られて固まるけど、すぐに「…遅いんだよ、ばーか」って困ったように笑う。誰がどう見たって両思いなのに、うじうじもだもだしてた2人がようやくくっついてくれそうで一安心の2年ズがいるよ。

西谷は雛に電話をかけながら雛の家に向かって走る。『もしもし?』って電話に出た雛に「今!今どこだ!」って言えば困惑しながら『いえの、まえだけど…』って返ってくる。その言葉に「今行くから、待ってろ!」って返して電話を切っちゃうから雛は「えっ…なに…?」って混乱する。

家まで送り届けるために一緒に来ていた同期の男の子が「どうしたの?」って首を傾げれば「なんか、今から来るって…」って雛が不安そうな、期待するような、ドキドキしているような顔をするから(ああ、ずっと好きで諦められなかったって言ってた男が来るんだな)って察する。

「雛!!」って西谷の大きな声が聞こえてハッとした雛が振り返れば走ってきた勢いのままに抱きしめられて「〜〜ッ好きだ!雛のことが好きだ!」って言われるからびっくりして目を見開く。それから言われた言葉をたっぷり時間をかけて理解すれば、じわじわと涙が溢れ出す。

「お、おそいっ、よぉ…!」って泣き出した雛の頬を流れる涙を「……悪い、遅くなって」って優しく笑った西谷がそっと拭う。それから立ち尽くす同期の男の子の前に立って「…すいません。コイツは、俺の、1番大事な奴なんで渡せません」って言うから今度こそ雛の涙腺が崩壊。

その涙が歓喜の涙だって、同期の男の子にはすぐに分かるから「…そ、っか。分かった。雛ちゃん、良かったね。1番貰えて」ってふんわり微笑んで引き下がる。思っていたよりもすんなり引き下がった男の子にびっくりしなからも雛の前にしゃがみ込んで「…雛、悪い。泣かせて」って眉を下げる。

「ほんとだよ…!」ってびゃっって泣く雛が愛おしくて、可愛くて、吸い寄せられるように唇を重ねれば、びくっと肩を揺らした雛がぽかんとした顔で西谷を見つめるから「涙、止まったな」って言えば「と、まった…けど、はぇ…?」って目をぱちぱち瞬かせてる。

そんな雛が可愛くてもう1回ちゅって唇を重ねれば、ようやく状況を把握して「んな…っ、なん、な…っ、なに、なに…!!」って片手で口を覆って、もう片方の手で西谷を指差して真っ赤な顔でわたわた狼狽えてるから、自分に向けられた手をぎゅって握った西谷が「好きだって言っただろ」って距離を縮める。

ギラついた目にきゅうって口を結んだ雛が「わ、わたしは、いってないもん…」ってそっぽを向くから後頭部に手を回して無理やり視線を合わせた西谷が「じゃあ今、好きって言って」って言うからぶわわっと顔が熱くなる。

「ぁ…っ、ぅえ、い、いま…、いまはっ…、」って視線を泳がせる雛に「キスしてえから、早く」って西谷が急かすから「〜〜っ、す、き…っんぅ、」って雛が小さく呟いた瞬間唇を押し付ける。噛み付くようなキスに頭がくらくらして、しがみつくように西谷に抱きつけば腰を抱かれて益々口付けが激しくなる。

「まっ、て、そとだから、まって…!」って雛に止められて唇を離せば真っ赤な顔で涙を浮かべた雛が肩を揺らしてぜぇはぁって息してるから「…悪ぃ」って素直に謝る。「いえ、そこだから、」ってちっちゃな声で呟いてアパートの部屋を指差した雛の手を握って「…それ、どういう意味か分かってるよな」って言えば「わ、わかってる…よ、?」って弱々しく握り返されるから我慢なんて出来るはずもない。

そのままアパートの階段を上がって、震える手で雛が鍵を開けて部屋の中に入るのと同時に唇が重なる。後ろ手に扉を閉めて鍵を閉めてご丁寧にチェーンまでかけた西谷に抱えられて朝を迎えることになるよ。

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