今の俺に出来ること

元々、バスケにはあまり執着していなかった。
もししていたら、帰宅部でバレー部の手伝いなんてせずに、結局バスケを諦められずに入学と同時にバスケ部へ入っていただろう。

だから正直、あの親善試合は当然の結果で、こちら側を馬鹿にする人が多いのであれば、ああやって言われるのも仕方の無いことだと思った。

本当ならわざわざ東京に行くつもりもなかったし、1年もブランクのあるバスケをしたくもなかったけど。
こんな俺でも、少しはあの親善試合に苛立ちは感じたようで。
そしてブランクを抱えている俺を必要としているのであれば、控えだろうが出場しなかろうが、行けばもう、この苛立ちを抱えることはないだろうと、根拠もなく、そう思った。



「…いや、なんでだよ!」

「ちょうど時期が梟谷グループの夏合宿と被ってたから、俺らも東京行くんだ!」



赤司に呼び出された俺は、準備もあって翌日の顔合わせには間に合わなくても練習2日目には顔が出せるようにし、学校へ念の為挨拶に行ったときだった。
ひょっこりと現れた日向は、笑顔で「俺たちも東京行くからな!」と言ったのだ。

梟谷グループの夏合宿と被っていたらしいのだが、事前に決まっていたのであれば俺が知らないはずもないし、とすると、急に持ち掛けたのだろうか。
まあ、どのみち俺はそれに出られないのだから、関係ない。



「あ、そう…。でも俺、昔のキャプテンから金もらってるし。宿泊含めて別行動だから。」

「夜も雄魔いねーのかよ!」

「ま、東京いんなら観に来れば。ボッコボコにしてやっから、あの爬虫類ども。」

「ヒィッ!?」



必然的に遠征となる俺のために天下の赤司様から宿泊施設の提供から新幹線の往復チケットまで、ご丁寧に速達で送られてきている(これもあって翌日招集には間に合わなかった)。
だから出発日が重なっていない日向たちとは一緒に向かえないし(そもそも使う交通機関が異なってる)、寝泊まりも別だと言えば、日向は衝撃を受けたと言わんばかりに驚いていた。
知ってたけど、コイツ、馬鹿だな。



「…あと俺、試合出ないかもしんねーから、あんま盛って報告すんなよ。スガさんとか特に!」



この言葉は、後にフラグとなる。
誰が芸人の定番やれっつったよ、バカ日向。



「え!雄魔出ねぇの!?」

「昔のチームメイトから声が掛かったっつっても、俺もやっとバスケ部に入部したレベルよ?それに、おまえらバレー部の方も、ヒトカがスコア記入とか慣れるまで面倒見なきゃいけねえから、練習よりそっち優先だったし。」



日向の問いに、思わず笑いそうになる。
呼ばれたからって、ブランクを抱えている俺が出られる可能性は低いのに。

俺は春高が終わったあとからバスケ部に入部した、いわゆる下っ端。
とは言え、帝光中での過去の栄光と、球技大会で腹が立ったからとは言え、中途半端に本気を出したせいもあって即戦力としてレギュラー入りしてはいる。
でも、例え烏野高校バスケ部でレギュラー入りをしていても、あのキセキの世代と比べたら、そのブランクはかなり大きい。
もう、あの頃のようには動けないだろう。

それを見越しても赤司に呼ばれたとしたら、万が一にも可能性はあるんだろうが…。
キセキの世代と、幻の6人目となる黒子が居れば、それだけで充分なんじゃないかとも思う。
まあ、あの中継を見る限りでは、ジャバウォックの実力は相当のものなんだろうが。
あいつらがあの腹立つ奴らをボコボコにするのであれば、それはそれで近くで見られて楽しい。



「俺、監督と話して絶対ェ行く!」

「あ、そう。まあ、俺が出るってあんまり期待しないでおけよ。俺もおまえが来ること、期待しないでおくから。」

「絶対ェ行くし!」



日向と話しながら、バレー部が練習する体育館へと足を運ぶ。
学校の先生側に挨拶してバレー部へは挨拶なし、なんて、絶対文句言われるしね。



「てことで、俺、東京行ってきます。」

「おお!頑張れよ、白布!」

「あいつらぶちのめして来いよ!」

「いやいや、俺は数合わせで呼ばれただけですから。ぶちのめすのは俺じゃなくて、アイツらキセキの世代っすよ。」



体育館に着いて、東京へ行くと挨拶をすれば、やけに興奮したように縁下さんと田中さんが食い付いてきた。
田中さんに至っては「ぶちのめして来いよ!」と言うけれど、その役はアイツらキセキの世代がすること。
俺は恐らく、ジャバウォックの解析をすることが本当の役割だろう。
それに関しては、バレー部で鍛えられたから自信はまあまあある。

ああ、それにしても。
今から身体が震えて仕方が無い。

例えベンチ温め組だとしても、また、アイツらの仲間として名前を連ねることが出来るだなんて。
こんな光栄なこと、あるだろうか。



「雄魔!やってやれよ!」

「…ああ!」



日向から向けられた拳に、拳を重ねる。
俺は、俺に出来ることを全うしてやるだけだ。