そして、俺が合流してから5日目。
練習が始まって6日目のことだ。
「おーし、終わりだ!後は明日の本番のみ!」
地獄の特訓も、漸く終わりを迎えた。
周りが「絶対勝つぞぉ!」「おおぅ!」と気合いを入れる中、死んだように倒れている俺は確実に浮いている。
と言うか、誰か俺にも意識を向けてくれ。
景虎さんは、今日もジャバウォックを迎えに行くらしい(なんでも滞在中の豪遊費を自腹で賄っているんだと、難儀なことだ)。
そんな景虎さんを見ていると、黒子が安定の影の薄さで景虎さんについて行っていた。
周りはまだ、黒子の消失に気付いていない。
曲がったことが嫌いな黒子のことだ、恐らくジャバウォックの連中に何かしら言ってやるつもりなんだろう。
まあ、俺には関係ないから好きにしろって感じだけど。
「…って、言ってん、のに…!」
「急ぐっスよぉ!白布っち!」
サツキチからの差し入れで体力を回復していると、黒子の消失に気付いた面々が危ないと思ってか、急いで黒子を迎えに行くよう準備していた。
俺は最初から気付いていたし、危なきゃ景虎さんがなんとかするだろうって思っていたから、当然行くつもりなんてなかったのに。
サツキチお手製のレモンのはちみつ漬けのラス1を食べようとした瞬間の、あの赤司様降臨の恐ろしさよ。
にっこりと微笑みを浮かべながら、「白布、何を呑気にしているんだい?」なんて言われてみろ。
恐怖で震えるしか出来ねえよ。
大地さんが本気で怒ったときと同等の恐怖だわ。
というわけで、痛いと悲鳴をあげる身体に鞭打って、俺も黒子を迎えに走っていた。
せめて歩いてくれ…!
▽
いや俺だって、多少は言ってやりたかったよ?
めんどくさいし目立つことはやらない、やりたくない主義だけど、どうせ試合には出ないし、ここまで巻き込まれたんだったら田中さんに任されたボコボコを口で言ってやろうと思ったわけね。
「しらちん邪魔なんだけどぉ。」
「おまえが地べたを舐めてどうするのだよ!」
「おい白布、大丈夫かよ。」
「放っとけ。体力ねぇこいつが悪ィ。」
「おまえらほんっと辛辣!」
安定のキセキの世代に、腹が立つ。
心配してくれるのは火神のみで、火神だけ疲れ果てた俺に肩を貸してくれた。
情けないの極みである。
殴られた黒子をかっこよく助けたキセキの世代と火神の後ろで、体力を極限まで使い果たした俺は倒れ込んでいた。
ジャバウォックに見付からなくて、本当に良かったと思う。
「俺だって怒り狂ってた田中さんの気持ちを汲んで、多少は言ってやりたかったのに…!」
「たった1年でそこまで体力を削がれ、それでも対戦相手に噛み付こうとする心意気だけは褒めてあげるよ。」
「…今その嫌味は心に来るわ。」
火神に半ば抱えられながら不満を零せば、それを聞いた赤司から嫌な笑顔で嫌味を言われる。
今の体力でそれ言われたら、俺だって泣きたくはなるんですよ。
もう絶対、面倒事には首を突っ込まない。
…まあ、でも。
黒子のこのアクションで、俺から見ても少しバラついていたこのチームも纏まったみたい、だし?
いい発破にはなったんだろうな。
俺としては散々だけどね!!