いよいよ始まった、ジャバウォック対俺たちヴォーパルソーズのリベンジマッチ。
多少予想はしていたけれど、満員と言わんばかりの観客に気後れしそうだ。
今更だけど、中学時代の俺も、全国の舞台で戦った烏野も、よく通常通りに動けたな。
「(ゲッ…!)」
「雄魔ー!」
「おうおう白布ー!あんな奴ら、完膚なきまでにぶっ潰してしまえ!」
「負けんじゃねえぞー!雄魔ー!」
「おまえらちょっと静かにしろって!」
ストレッチも兼ねて身体を解しつつ、会場全体を観ていると、思ったよりも近い場所に烏野の団体があっていつも通り、日向・田中さん・西谷さんは騒ぎ立てて縁下さんから怒られていた。
絶対返事してやらねえんだ。
烏野集団を無視して他も見ていると、烏野よりは離れているが、それでもさほど遠くない距離に梟谷グループのみなさんが勢揃いしていた。
みなさんって言っても、まあ、2年生からOBまでの、俺と面識のある人たちだけだが(2年になってからは今回が初合宿だから、1年生は俺のこと知らないままだよね)。
場所が解ってしまったら、なんとなく視線が突き刺さっているように感じて仕方が無い。
こんなことなら、あいつらの場所なんて探さなければ良かった。
今更そう思ったところで、結局は後の祭りなのだけど。
「さあ、行こうか。オレたちであいつらに屈辱を味あわせてあげよう。」
赤司の一声で、俺たちの空気が一気に締まる。
この感じ、帝光で感じていたあれと同じだ。
久しぶりのデカいコートで、相手がキセキの世代よりも上かもしれないって言うのに。
気分が上がって仕方が無い。
「スターティングメンバーはキセキの世代の5人…と、いきたいところだが…。」
景虎さんの元に集まり、スターティングメンバーの発表を待つ。
流れを持って来るために、1番安定したキセキの世代の5人をスタメンとして起用することは目に見えていた。
それなのに、景虎さんは言葉を濁し、俺に視線を向ける。
…いや、まさか。
俺、ブランク抱えてるし、赤司の地獄のメニューでバッテバテになるんですけど。
有り得ないよね、渋ってるだけだよね。
良いよ言っちゃいなよ、わざわざ宮城から呼んだのに試合に出さないなんて悪い、とかそういう気遣い要らないから。
「スターティングは赤司、青峰、緑間、紫原、白布の5人で行く。」
「嘘じゃん!!?」
「白布、文句があるのかい?」
「トンデモゴザイマセン。」
まさかとは思ったけど。
景虎さんは、キセキの世代の一員である黄瀬を外し、ブランクを抱えた俺を選択した。
何度でも言う、俺にはブランクがあるんだぞ。
思わず「嘘だ!」と言えば赤司に睨まれ、何も言えなくなってしまう。
こんな貴重で重要なスタートという場面で、俺が出ても良いのだろうか。
そうは思うけれど、赤司のことだ、景虎さんの判断が違うと思っていれば、あいつは即座に抗議しただろう。
でも、赤司は反対しなかった。
つまり、赤司も俺に対してそれなりに希望を抱いてくれている、ということ。
ならキャプテンに報いるため、頑張ってみて…いや、頑張るしかない。
「凡ミスすんじゃねーぞ。」
「またぶつかって来たら、ひねり潰してあげるからねえ。」
「紫原怖いよ!」
くそ、絶対ミスしねえ…!