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■ ■ ■
「よっ、眞喜ちゃん」
「げ」
それはとある放課後、私はバイト先のコンビニでレジ打ちをしていたときだった。来良学園に通っている私は一人上京してきた為に毎日バイトをこなしている。学校の人に会うのは嫌だったからなるべく学校から距離のあるところを選んで。
しかしどうして中々世界は狭い。今日初めて、同じ学校のしかも同じクラスの人と出くわした。彼の名は紀田正臣。来良に入学して何十人もの女子に告白した不躾者。かく言う私もそのうちの一人なんだけど。
とにかく学校の人でも会いたくない人No.1の人物に、今私は話し掛けられてしまった。レジにはどこにでも売ってそうな缶ジュースをひとつ。それのバーコードを読み取りながら、紀田の第一声と自身の反応を無かったことにする私。
「眞喜ちゃん、今反応したよね?」
「……130円になります」
「ね、」
私が彼と会いたくなかったのは勿論、
「返事、聞きたいんだけど」
彼からの告白に返事をしていないから。
「……………」
小銭を受け取り、20円のお釣りとレシートを渡す。紀田くんは袋を掴みながら、私に視線を固定しながら唯、待った。……他の娘だったらここまで粘らない癖に。私は観念して、自分の答えをはっきりとに声にする。
「紀田くんの告白には答えられない」
それを聞いた紀田くんは相好を保ったまま、淡々と尋ねてきた。
「どうして?」
「………嫌いだから」
そう言うと、彼は少し苦笑いになる。――……ほら、自分でも分かってんじゃん。そういうところが嫌いなんだ。私と誰かを重ねてるのが嫌い。それをごまかすように沢山の女の子と接点をとるのが嫌い。それも全部分かってるのに何もしないのが嫌い。しかもそれにちょびっと罪悪感抱いてるみたいなところが嫌い。何より――……
「私に振られてちょっと寂しそうな顔してるのが一番嫌い」
あ、ちょっと驚いた顔してる。これは無自覚だったのか。そういうところは、ちょっと好き。だから最後にひとつだけ、私からの後押し。
「だって紀田くん、ちゃんと好きな人……いるんでしょ?」
そして彼は再び軽い苦笑いを披露すると、大袈裟なモーションで後頭部を掻いた。
「眞喜ちゃんには敵わないな。そういうとこ、俺結構好きだったんだけど」
「それはちょっと嬉しいことはないこともない」
「ややこしいなっ」
私が『断る』じゃなくて『答えられない』と言った理由。それに彼が気づいたことにきづいていないフリをして、
「そんじゃ、またな、眞喜ちゃん」
店を出る彼を見送った。
「『またな』……か。……返事したから、会いたくない人No.1からは格下げかな」