恋心強襲

■ ■ ■

かぶき町の一角に佇む『万事屋銀ちゃん』。

ここで働く志村新八は今日も、雇い主と従業員その2である年下の少女にこき使われていた。

「オラオラ、さっさとジャンプ買いに行けよダメガネ」
「酢昆布も忘れるんじゃねェゾ、ダメガネ〜」

「あんたらちゃんと人を見送る気ないのか!!」

この日、珍しく依頼があった為に新八が買出しに行くと申し出ると、
ついでとばかりに自分の用までも押し付ける銀時と神楽。

動こうと言う気の欠片もない二人に悪口と共に見送られ、新八はスパンッ、と勢いよく玄関の戸を閉めた。

「まったくもう、神楽ちゃんも銀さんも依頼でお金が入った途端
自分のもの買いに行けって命令するんだから…」

ぶつくさと文句をいいながらも、新八は日常品やふたりの頼まれ物を買いに行く為、
近場の大江戸マートへ行こうとあたりをつけながら玄関前の階段を降りる。

途端、

「ダ・メ・ガ・ネ〜!!」

「ぶふぉおッ!!」

いきなり何か――いや、誰かが勢いよく新八の胴体にタックルを決めた。

バランスを崩し、地面にうつ伏せに倒れる新八。

「いたたたた…」

ぶつけた額を押さえながら地面に手をつき、上体を起こそうとする
…が、

「………あの、…眞喜さん。
そろそろ僕の上から降りてくれませんか?」

「あは。ばれてた?」

「『ばれてた?』じゃありませんよ!!新手の通り魔か何かですか、アンタは!」

うつ伏せに倒れた新八の上に座り、起き上がらせまいとしていたのは眞喜。
怒鳴る新八とは対照的に、新八の上から嬉しげに飛び降りる。

「一体何してるんですか…」

呆れ気味に溜息を吐き、新八はズレ落ちた眼鏡を掛けなおした。

「だって万事屋から新ちゃんが出てくるのが見えたからさ、ついちょっかい出したくなっちゃて」

くふふと笑い、眞喜は新八の横へと位置取る。
そして無造作に新八の腕に自分のそれを絡めると、ぐいぐいと新八を引っ張り始めた。

「買い物行くんでしょ?私も一緒に行きたい」

「別にいいですよ。
…あ、言っておきますけど、何も買いませんよ」

赤くなりながらも、されるがままの新八は気を取り直し、眞喜の手を握る。

「お」

新ちゃん成長したねェ…。

##NAME#2#は笑い、新八の手を柔らかく握り返した。


(しかし…いつまで経っても初心だね、新ちゃんは)
(…その『新ちゃん』って言うの止めてくれません?)