job

■ ■ ■

「ところで、眞喜って、何の仕事してるんだ?」

ある時、オレはふと疑問に思ったことをニノさんに聞いてみた。
つい最近、この河川敷の住人だと知った眞喜。

この河川敷では皆それぞれ職業に就いているのだが、
彼女が仕事をしているところを見たことがない。

そこで、河で魚を獲るという仕事に勤しんでいるニノさんに尋ねてみたというわけだが…。

「おお、アイツは河の掃除と他の奴らの手伝いをしてるぞ」

答えたのはニノさんではなく河童こと村長だった。

何で人が話しているところに(肌色の)首を突っ込んでくるのかは
この際ムシして。

「掃除……ですか?」

「おうよ!そのお陰で俺もこのように元気で生存できてるってわけよ」

なぜ村長が得意げになる。

それに、河童は別に綺麗な河でなくても生きれると思うのだが…。

「それだけじゃないぞ」

河から大量に魚を獲ってきたニノさんが、濡れた髪を絞りながら言った。

「時々教会で賛美歌を弾いている」

「賛美歌…ですか?」

「調子がいい時は歌も歌ってるぜ」

河から上がってスーツがぴたっとしている威厳のない村長が
ニノさんの言葉に新たな情報を付加した。

「オレ、一度も聴いたことないですけど」

「ここ最近空気が乾燥してるからな。眞喜も喉の調子が悪いんだろ」

「お陰で俺もこまめに水を被らないと皿がカピカピになって大変なんだよ」

「洗い残した米でも付いてるんじゃないんですか?」

BGMとして村長の文句を聞き流しながら、教会のほうに視線を向けてみる。

「また今度…聴いてみたいですね…」

まだまだこの河川敷には、オレの知らないことがありそうです。