それは白くて純粋なもの

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繁栄世界テセアラ≠フ首都メルトキオ=B滅多に雪に覆われないこの街はこの日、記録的な大雪に見舞われていた。

「待たせたなぁ、眞喜ちゃん」

一見軽薄そうに聞こえる声が広場に響いた。白に覆われているベンチに座った少女はその声の主を振り向くと、とても嬉しそうに顔を輝かせた。

「ゼロス……!!」

「悪いな。寒い中こんなトコで待たせちまって」

眞喜の隣に座ったゼロスは、彼女の肩に積もった雪を払う。

「別にいいよ。それよりもゼロスと雪の中会えて嬉しい」

ゼロスに無垢な笑顔を向ける眞喜の頭をゼロスは優しく撫でる。

「そうだよな。一体何年ぶりなんだか。メルトキオで冬を過ごすなんて」

以前ならかかるはずのゼロスの影は、もうすっかりと晴れている。

「ま、それもひとえに眞喜ちゃんのおかげなんだけどな」

嬉しそうに頭を撫でられる眞喜は、不思議そうに首をかしげる。

「眞喜ちゃんってさ、雪に似てんだよなぁ」

「雪?冷たい…?」

ゼロスの言葉の意味がわからず、困惑する眞喜。その様子を見て、ゼロスは下品な笑い声を上げた。

「でひゃひゃひゃひゃ。ま、この意味が分からないのも眞喜のいいところなんだろうな」

しばらくゼロスの言葉の意味を考えていた田中だったが、思い当たる節が無くそれでもぱっと顔を上げた。

「それって、私がゼロスの何かにとってのきっかけになれたってことだよね?」

「そういうことになるな」

「嬉しい!!」

と、眞喜はゼロスの腕に抱きついた。と、ゼロスは途端真剣な表情になって、眞喜の肩に手をまわした。

「俺も、眞喜と会えて嬉しい」

「えへへ…ありがと」

雪の中で、二人は静かに微笑みあった。


俺が好きになったもの――


それは白くて純粋なもの