偶のお手伝いは得になる
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「じゃあ買い出しよろしくね、アルヴィン」
そう言って優等生は俺の手にガルドの入った革袋を握らせ、いい笑顔で俺を部屋から閉め出した。買い出しなんか村に入って宿屋を見つける前に済ませておけよ、という愚痴はなんとか飲み下し、隣の女部屋へ向かう。
楽しそうに談笑してんなぁ。扉越しにも聞こえてくる女子たちの黄色い声に苦笑いしながら、三回ノックした。すると中の声が一斉に止み、あまり歓迎できた風ではない沈黙が訪れる。
中々反応が返ってこないので仕方なく、後頭部を掻き声を張り上げた。
「あー……眞喜、ちょっといいか?」
そうして程なく顔を出した眞喜。
「買い出し、付き合ってくれない?」
完全に部屋から出てきた眞喜にそう言うと、彼女は
「アルヴィン君からのお誘いだ!!」
と、酷く嬉しそうに顔を綻ばせた。一人で買い出しなんかゴメンだ。しかしどうせ一緒に道を歩くなら女で、更に面倒臭くない奴が良い……という理由で選んだだけなのだが。それを見て俺もつい、表情を崩してしまった。
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町というより村と形容した方が適切であろう今回の拠点はしかし、市場がバカみたいにでかかった。至る所から商人の客引きの声が聞こえ、果物や野菜を中心に、少しの装飾品などあらゆるものが所狭しと並べられている。何気に客も沢山いて、隣を歩く華奢な少女などすぐに流されてしまうのでは、と柄にもなく心配になり、物珍しげにきょろきょろと向きの定まらない眞喜の顔を見た。
「おたく、こういうトコもしかして初めて?」
「うん、こんなに人が集まってるの見るの初めて!なんだかドキドキするね!」
元気よくそう返事する眞喜だが、時々人にぶつかられてよたよたとするのがやけに目につく。コイツと居るとどうしてか庇護欲をかき立てられちまう。他に構ってる余裕なんてない筈の俺が、どうしてか傍に居てやりたいとか、思っちまうんだよなぁ。そう思ってるのも束の間、急いでいる風の男に肩をぶつけられ、眞喜が大きくバランスを崩した。
「っと、危ねぇな」
なんとかすんでの所で体を支え、眞喜は転ばずに済んだが、男が去っていった人ごみを睨みつける。
「眞喜、大丈夫か?」
腕の中で眞喜が身じろいだのを感じ、俺は彼女を立たせ、顔を覗きこんだ。
「大丈夫だよありがとうアルヴィン君」
一息にそう言った眞喜の頬はほんのり赤く染まっており、眞喜は若干ぎくしゃくした足取りで道を進み始める。想像以上の初心な反応に俺は意地悪く口角を上げ、少し先を歩く眞喜に追いつき、素早くその手を取った。
「ななな何!?」
眞喜は突然の事にこれ以上にないという程取り乱し、繋がれた手と俺の顔を交互に見比べる。
「はぐれてしまわない為の措置ですよ、眞喜姫」
そう言って少しニヒルな笑みを向けると、眞喜はとうとう顔を真っ赤にして俯いた。そしてその後眞喜は大人しく、アルヴィンに引っ張りまわされるのであった。
(何か欲しい物があったら遠慮なく言えよ)
(コレ皆のお金でしょ?)
(いいんだって。俺からお姫様へのプレゼントだから)