自分の部屋に彼女が無防備に寝ていたら大抵の男はどうするだろう。据え膳食わぬは男の恥と言わんばかりにいただいてしまうか、それとも寝顔を堪能するか。後者はぬるい考えだろうか。まぁ俺は間違いなく後者を選ぶ。
普段は活発に活動している彼女の寝顔を見ることができるのは珍しいことだ。実際こうして寝顔をまじまじと見るのは初めだ。もともと幼い顔立ちだが、眠っている名前はもっと幼く感じる。彼女は右半身を下にして寝ているが、重力に逆らえない頬は、だらしなく床につぶされている。随分柔らかそうだな。そう思って、上にある左の頬を優しく触る。起こさないように慎重に触ると、ちょっと触れただけでもその柔らかさが分かった。
少し力を入れてふにふにと触っても起きる気配がない。これは悪戯のしがいがありそうだ。
次に彼女の手に目線を向けた。力なく放り出されている左手を掴んで、恋人つなぎをする。ちっちぇ…。俺の手はすっぽりと名前の手を覆う。にぎにぎと閉じて開いてを繰り返しながら、彼女の体温を味わう。彼女の全体を見ているうちに、お、こんなところに黒子あったのか、と新しい発見をする。
そろそろ起きてくんねーかな。さすがにこの状態も寂しいものだ。
そう思いつつ、ふっと耳に吐息をかける。
すると、彼女の口角が微かに上がったのが分かった。これは起きている奴の反応だ。しかしまだ寝ているフリを続けるのか、依然として目をつぶったままだ。面白い。根競べと行くか。
俺はまだ彼女が寝ていると思っている体で行動したほうがよさそうだな。
そのあとからいろいろな悪戯を仕掛けるが、彼女も意地で起きないようだ。こうなったら、最後の手段と行くか。俺は彼女の脇腹付近に手をやり、くすぐり始める。
『っふ、ふふ、あははっはあ!ちょ、やめてください…!』
まあ当然の結果だ。本当に起きているのだから、くすぐりが効かないはずがない。
「おはよーございます。よく眠れましたか」
『!!!…寝てました!おはようございます!』
「元気だな」
威勢よく挨拶をする名前は本当に高校生なのか。可愛いな。挨拶を覚えたての子供のようだ。
「寝言で俺の名前言ってたんだけど覚えてるか?」
これは大ウソだ。だけどからかいたくなってつい出まかせを言ってしまった。
『私ってば夢の中でも鉄朗さんのこと好きなんだぁ』
頬に手を当てて、照れながらつぶやく名前は、この瞬間世界で一番可愛い。純粋すぎるのも考え物だ。他の男に取られないように目を光らせておかなければ。
「あ〜、俺の彼女最高…」
『うわぁ〜』
強引に引き寄せると、どこか嬉しそうな声を挙げて俺の腕の中に収まった。このサイズ感もたまらない。頭にキスを一つ落とすと、ふふ、という声を挙げた。
どんなに触れても足りないくらい、俺のひよこは最高に可愛らしい。
2019.08.31- by ぷんぷん