朝のグラウンド。
キャッチャーミットを磨いていたら、後ろから声が飛んできた。
「俺のミット、大事にしすぎじゃね?」
振り向くと、例の笑顔。
あの、いつも余裕ありげで、人をからかうために存在してるみたいな顔。
「これがないと御幸先輩、仕事にならないでしょ」
「へぇ……なまえって、俺のことちゃんと見てくれてんだ?」
冗談めかした低い声。
心臓が一瞬だけドクンと跳ねる。
でもこんなの、御幸先輩の日常茶飯事——のはずだった。
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その日の練習後。
倉持先輩とふざけながら水分補給していたら、背後から影が差す。
「——楽しそうだな?」
振り向くと御幸先輩。
笑っている……けど、いつもより目が冷たい気がする。
「別に。ただの世間話」
「ふーん。俺のときより笑ってね? なまえ」
え、何その言い方。
からかいじゃない……っぽい。
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帰り際、グラウンドの端で呼び止められた。
「なぁ、なまえ……俺に構っとけよ」
「は?」
「他の奴と笑ってんの、面白くねぇ」
真顔。
反則でしょ、その顔でそんなこと言うの。
「……別に構ってほしいとか——」
「いや、構ってほしい。俺は」
そう言って、ついっと距離を詰められる。
制服の袖を軽く引かれ、次の瞬間、額が触れるほど近く。
「俺が欲しいのは、なまえの笑顔。……俺だけの」
心臓、爆発。
気づけばうなずいていて、御幸先輩はまたあの悪い笑みを浮かべた。
「じゃ、俺専属のマネージャー、よろしくな」
——あぁもう、ズルすぎ。
好きにならない方が無理だってば。