練習終わり、帰り道。
夕暮れの空が突然暗くなったと思ったら、ざぁっと雨が降り出した。
「うわ、マジかよ……」
御幸となまえは慌てて近くの部室棟の軒下へ駆け込む。
「先輩のジャージ、びしょびしょじゃないですか!」
「お前もな。ほら、動くなって」
御幸はタオルを取り出し、乱暴なようで優しい手つきでなまえの髪を拭いてくれる。
視線を合わせられなくて、胸の奥が熱くなる。
「……風邪ひかれたら困るんだよ。俺が風邪ひいても代わりはいるけど、お前が倒れたらチーム全員困るからな」
冗談めかす声なのに、まっすぐで優しい響きに、チームが困るのは一也先輩が風邪ひいたらなのに……と思いつつも、心臓が跳ねた。
御幸は自分のジャケットを脱ぎ、なまえの肩にそっと掛ける。
「……重いだろうけど、我慢しろ」
「……ありがとうございます」
雷が鳴り、空気が震えた瞬間、なまえは思わず御幸の腕を掴んでしまった。
びくりと固まったなまえを、御幸は少し驚いた顔で見下ろす。
「……可愛い」
低い声で囁かれ、頬が一気に熱くなる。
沈黙の中、雨音だけが響く。
御幸はふっと口元を緩め、なまえの頭をポンと撫でた。
「雨止むまで、このまま一緒にいようか」
甘く落ち着いた声に、なまえは小さく頷いた。
心臓の鼓動は雨音よりも大きく響いて、消えそうになかった。