休み時間、廊下ですれ違った御幸一也にばったり出くわした。
なまえは慌ててスコアのチェックをしようとしたけれど、御幸は腕を組んでその行く手を塞ぐ。

「……それ、今やる必要あるか?」
「え、でも先輩はスコア見たいでしょ?」
「バカ。俺の見るスコアより、お前といる時間の方が大事だろ」

そのまま校舎の片隅のベンチへ座る二人。なまえは自宅から持ってきたお弁当を広げる。
「手作り?」目をキラキラさせて見つめる御幸。
「……一也くん、食べる?」
「ひと口だけくれ」

素直にあげたなまえの一口に、御幸はにこにこしながら「うめぇ……」と笑う。
「……ほんとにひと口だけね」
「お前が作ったやつは特別なんだ」と真顔で返す御幸に、なまえの頬は自然と赤くなる。

なまえはお弁当を食べ、御幸はスコアを眺める。
沈黙が流れても苦じゃない。互いに居心地のいい時間が流れる。

やがてなまえが食べ終え雑誌を取り出し、高校野球のページをめくると、御幸はそっとなまえの小指に手を重ねた。
軽く握られる感触に、なまえは胸をドキリとさせる。

「……な、何?」
「手、冷たくねぇか?」
微笑みながら握り返す御幸に、なまえは心臓をぎゅっと掴まれる。

すると御幸は小指をぎゅっと強めに握り直し、なまえの顔をじっと見つめる。
「……誰にも触らせるなよ、俺以外」
その言葉に、なまえは息を詰め、自然と体が熱くなる。

なまえは思わず顔を上げ、少し赤くなった頬を御幸に見せる。
「……一也くん……」
御幸はその顔に微笑み、指先でなまえの手をそっと撫でる。

その時、部室の入口から倉持先輩が通りかかる。
スコアと雑誌、そして手を繋いだままの二人を見て、思わず目を見開いた。

「……え、ちょっと待て。お前ら……何してんの」

御幸はちらりと倉持を見て、わずかに笑う。
「別に、何か問題でも?」

なまえも頬を赤らめ、小さく頷く。
倉持は呆れたように頭をかきながら、「二人きりでスコアと雑誌って……いや……まぁ、楽しそうで何よりだな」とだけ言い残して去っていった。

再び二人だけの空間に戻ると、御幸はなまえの小指を再びぎゅっと握り、耳元で囁く。
「……俺のこと、独占してるだろ」
「……してる」

微笑み合いながら、なまえは御幸に抱き寄せられ、休み時間は二人だけの甘々な時間に溶けていった。



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