夜のグラウンド。
選手たちが帰った後も、キャプテンとして残り、ひとりスコアを見直している御幸。
グラブを外した手でページをめくる仕草は疲れていて、肩も重そうだった。

「……一也くん」
マネージャー室から顔を出したなまえが、温かい飲み物と小さなおにぎりを差し出す。

「ちょっと休もう?」
「俺は大丈夫」
即答する御幸に、なまえは小さくため息をついて、そっと背中に手を置いた。

「……もう十分頑張ってるよ」

その一言に、御幸の手が止まる。
視線を落としたまま、少し笑って――ふいになまえの肩へ頭を預けた。

「……やべぇ、俺、完全にお前なしじゃ無理だわ」

苦笑する声は、普段の余裕をどこかに置いてきたみたいに甘くて弱い。
驚いたなまえが「お疲れさま」と囁きながらそっと髪を撫でると、御幸の腕がぎゅっと腰に回った。

「……離せねぇ」
「え?」
「甘やかされるの……気持ちよすぎて、もう離したくなくなる」

耳もとで零れる低い声に、心臓が跳ねる。
抱き寄せられるまま、なまえは胸に手を添えた。

御幸はその手をぎゅっと握りしめて、少し照れくさそうに笑う。
「なぁ……もうちょっとだけ、俺を癒して?」

囁くように求められて、顔を上げた瞬間――
唇が重なり、なまえは彼の甘さに溶けていった。



お話一覧へ/3939.