自分の給料で買ったチケットを握りしめ、なまえはワクワクと少し緊張しながら球場へ向かった。
今日の試合は、御幸が熱心にプレーする姿を間近で見られる特別な日。

 試合が終わり、球場の喧騒が落ち着く頃、御幸から呼び出しの連絡が届く。
「なまえ、ちょっと来てくれ」
短いメッセージに、胸が跳ねる。

 人混みを抜け、御幸の元へ駆け寄ると、彼は真剣な顔で待っていた。
「お前……疲れてんのに、来てくれたのか?」
少し息を切らしながらも、御幸は優しく微笑む。

 なまえが「だって、かずやくんの試合だもん」と答えると、御幸はその言葉に抑えきれず、そっと抱き寄せた。
人混みの中でも、周囲は気にせず――ただ二人だけの世界。

「俺は……お前だけを見てる」
不意に囁かれ、なまえは小さく顔を赤らめる。

 その時、沢村が近くで声をかける。
「お!みょうじ!」「さーむら!」
賑やかに盛り上がる周囲に一瞬モヤっとする御幸だが、すぐに笑顔を取り戻し、なまえをぎゅっと抱き締めた。

 二人きりの温もり。
試合後の疲れを忘れるほど、甘く幸福な時間が、球場の片隅に静かに流れていた。



お話一覧へ/3939.